ジョージ・ベスト
函館東高校のサッカー部に佐藤さんという3年生がいた。
長髪をなびかせ、まるで足にボールがすいつくようなドリブルで得点を重ねた。
1年生だった僕は佐藤さんのプレイに魅せられ、憧れた。
その姿はサッカーマガジンの表紙を飾るジョージ・ベストそのものだった。
僕のサッカーアイドルはペレとジョージ・ベストだった。
当時実際の動画など観ることなどなかなかかなわぬ時代だった。
ペレもベストも観たことなどない。サッカーマガジンの写真と記事を頼りに頭の中で妄想をふくらませるのみだった。
後にジョージ・ベストのビデオを観る。妄想通りのドリブルだった。それは佐藤さんのドリブルを観てふくらませたイメージだった。
連日ワールドカップの熱戦を堪能している。ほとんどのチームは組織的で緻密。見事なまでに緻密にビルドアップされている。ため息が出る。
でも反面でちょっと淋しさを感じるのも事実だ。
個の力でこじあけ、ねじふせる小気味良さと美しさ。
ジョージ・ベストのようなプレイを観てみたい。
高度に組織化された現代サッカーではもはやかなわぬ夢なのかもしれない。
高校1年の夏、全道大会が函館東高校で行われた。
北海道の古豪・函館東も出場したが敗退した。
華麗な佐藤さんのドリブルは組織的な守備網の前では力を発揮できなかった。
その年の全道優勝はトータルフットボールを模した室蘭大谷高校だった。
この年から室蘭大谷の天下が続くことになる。
北海道の高校サッカーの歴史がぬりかわった年だった。
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