参加している音楽サークル「唄の驛」で新しい取り組みを模索している。
「ギター弾き語り」をよりよくするためにメンバー同士で意見交換をしよう
それを通して各自の「弾き語り」の質や説得力を高めよう
という試みだ。
本来「弾き語り」は個人的な表現方法で、個々人が暗中模索しながらそれぞれのやり方を築いていくものだ。
しかしそれぞれの考え方・やり方を公開し共有化することで、より幅が広く深い表現を可能にできるのではないか。
第1回目の水先案内人を依頼されたので、自分の考え方ややり方をレジメとしてまとめてみた。
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弾き語りという音楽手法があります。
ギターはもちろん、ピアノやウクレレ、バンジョー、オートハープなど他の楽器での弾き語りがあります。
(古くは琵琶やバイオリン、アコーディオンなんてのもあります)
この集まりで対象にするのはギターによる弾き語り。
いちばんポピュラーな楽器で、とっつきやすい。
しかも「唄の驛」ではほとんどの方がこのスタイルで歌われているからです。
ギター1本と歌声があれば弾き語りができちゃうところが何よりの魅力ですね。
でも容易に取り付ける弾き語りが実は結構奥が深く、なかなか成しがたいのものです。
【なぜ弾き語りをやるのか】
まず最初に考えておきたいことです。
何のために弾き語りをやるのか。
1.人に聴いてもらいたいから
2.歌で自己表現をしたいから
3.共感・共鳴を得たいから
4.「すごい!」と人をうならせたいから
5.モテたいから
6.自分自身の楽しみのため(自己充足)
どれも正解だと思います。
ほかにもいろんな動機や目的があると思います。
そのどれもみな正解。
上の例で行くと、6番だけがほかの理由と性格が違います。
1~5は弾き語りを他の人に聴いてもらうということが前提になっています。
ところが6番は必ずしもそうではない。
自分自身の満足感、納得感、充足感のために歌う。
つまり歌やギター演奏が自分自身に向いているのです。
そしてこれもまた立派な動機です。
(老い先が長くないおばあさんが「アルハンブラの想い出」を弾けるようになることに人生最後の目標を定めた。そして稽古に励んだというお話もあります。)
この集まりに来られた方はおそらくみんなが1~5に類する目的だろうと思います。
そのことをまず最初にしっかり意識することが大切だと思います。
誰のために歌うのか?
それは聴いてくれる人のため
その結果が自分に満足感として反映される
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【弾き語りに決まった法則はない】
おそらく弾き語りをする人の数だけ、やり方や作法があると思います。
つまり自分の道は自分自身で切り拓き、築き上げていくものだと思います。
それは目の前に広がる大海原に帆を張り、風まかせで旅立つようなものです。
右へふらふら、左へふらふら、時には潮に流されたり、座礁の憂き目にあったり…。
そんなことをくりかえしながら自分だけの羅針盤と海図を作り上げていく。
正直、気の遠くなる道のりです。
でもそう言ってしまえば身も蓋もない。
そこでこの集まりが意味をもってくると思います。
ギターの弾き語りについて教えあい、かつ学びあうことが目的の集まりです。
ひとりひとりの経験ややり方、作法を
みんなで共有できないか
それによって自分自身の海図と羅針盤を
より確かなものにしていけないか
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Martin古池がその水先案内人を務めさせていただきます。
水先案内人は決して講師ではありません。いわばガイド役です。
なぜなら僕のやり方は僕のやり方にすぎず、そのまま他の人に適用できるわけではないからです。
ただ長年のライブ活動の中で自分なりのやり方(海図)を築き上げてきたのもまた事実です。
その意味で一つの考え方・やり方を提示できるのではないかと考えています。
たたき台として参考にされ、それぞれの羅針盤、海図作りの一助になれば幸いです。
【弾き語りの要素】
1.最も大切なのは「伝えたいことは何か」を明確に意識すること
歌それ自体に込められた思いや、自分が歌に託したいものは何か。
それがぼやけていると歌は説得力に欠けてしまいます。
歌の意味・意義を明確にするために僕がやっていることは次の通りです。
①歌詞をくりかえし朗読しその歌自体を感じ取る
②朗読の過程で自分なりの解釈を付加し、かためていく
③最初は棒読みでもくりかえし朗読することでリズムが出てきます。
④そうなったらそのリズムにメロディを乗せます。(鼻歌でいいのです)
やがて歌詞とメロディが一体になってきます。
鼻歌だから息継ぎ(ブレス)も会話をするようにごく自然にできると思います。
(ごく自然であることが大事だと思います)
⑤鼻歌によりそうようにギターをかぶせていきます。
(この段階ではストロークでもアルペジオでもOK)
2.歌をどう聴かせるか考える(アレンジ)
1.の過程はその歌を自分のモノにすることに主眼がありました。
だから意識は自分の内側に向いています。
次はその歌を人に聴いてもらうためにどうするかです。
ここで意識を外に向けます。
①どのように歌うかをあれこれイメージする
②歌を活かすためにはどのようなギターアレンジがベターかイメージする
③テンポ、イントロ、間奏、エンディングや曲間のブレイクなども同時にイメージする
ここで大切なのはイメージだと思います。
イメージを描き、それを形にする作業です。
(可能であればステージで歌っている自分とお客さんの様子もイメージする)
ラフなイメージができたらその段階で歌を細切れにして練習します。
細切れとはたとえば小節単位だったり、Aメロやサビの区切りだったり様々です。
(たった1音でもくりかえし歌うことがあります)
次に細切れにした断片をつなげて1つの歌に仕上げます。
仕上げたらあとは何度も歌いこむのみ。
(この段階でようやく「形」になります)
3.実際のステージで「形」にした歌をたたき鍛える
ここは意見の分かれるところです。
練習段階で完成していなければ人様の前で歌うべきではないという考えもあります。
もちろんそれも正論だと思います。
練習は多ければ多いほどいいのです。
演奏がよりこなれてくるし、技術的にも精度が高まってくるのは間違いないことですから。
でも僕の場合は「形」にしたら早々とライブ・ステージで演奏しちゃうことが多いです。
それは練習で何百回歌っても、絶対に生まれないものもあると思うからです。
本番ステージの緊張感、お客さんの視線、ライブ空間の醸し出す独特の空気。
それに対峙する自分の心の動き。
そういう「場」で歌ってこそ歌はたたかれ、鍛えられるような気がします。
「唄に命を吹き込む」とか「魂を込める」という言葉があります。
ライブ本番を経ることではじめて生まれてくることかなという気がします。
ライブ=生=生き物という視点で考えると、ステージを生きた空間にするために必要なことがあります。
それは弾き語る自分と聴いてくれるお客さんとの間になんらかのコミュニケーションを成立させるということです。
(気持ちの交感、言葉の交換、共に歌う交歓、etc...)
ステージでの姿勢 : 弾き語る者として自ら襟を正す
客席の状況の察知 : 目配り、気配り(アンテナ感度)
状況に応じた対応 : 客席の反応に対するリアクション
そういったことも必要になってきます。
そういうことは実際の本番を積み重ねる中でしか鍛えることができません。
4.ライブ本番の結果から学ぶ (反省はしても後悔はするな)
これはとても大事なことだと思っています。
どんなに練習を積んで本番に臨んでも、ミスや失敗は必ずついて回ります。
生身の人間がやることですから。(だからこそ「ライブ」なんですが)
だからうまくいったことも、失敗したことも含めて「よし」として受け止めるようにしています。
そうすると後悔は残りません。
後悔が残ると次への課題が見えにくくなります。
でも反省は大いにするべきです。
なぜうまくいったのか :たまたまか。ワケがあるのか。そのワケは何か。
なぜ失敗したのか :人に飲まれたのか。自分を見失ったのか。
単純に練習が足りなかったのか。
僕はそれを牛のように反芻します。
時には文章にして心の中を整理します。
反芻を通して出てきた「課題」を明確にして次の準備に入ります。
5.弾き語るための基本的なトレーニング
これも人によってやり方が分かれるところです。
それぞれの考え方・やり方に応じて違ってくるところです。
個性にかかわる部分なので一概にくくることはできないと思います。
でも基本となる項目はある程度明確かと思います。
歌について
呼吸の仕方 (身体のトレーニング)
発声の仕方 (身体のトレーニング)
歌い回し (解釈の具現化)
ギターについて
ストローク
フィンガーピッキング
チューニング
小物について
弦
ピック
爪
ボトルネックとオープンチューニング
ハーモニカやカズーなど
★最後までおつきあいくださいましてありがとうございます。
ここに書いたことはあくまでも水先案内のガイドラインとお考えください。
僕自身すべての歌でこれをやっているわけではありません。
また段階を踏まずに同時進行でやったり、逆からやったりもしています。
アマチュアミュージシャンは日常の暮らしや仕事との兼ね合いで限られた準備の中でライブなどに臨まざるをえません。
そんな状況の中で少しでも実りある弾き語り演奏ができるように、みんなの知恵や経験を出し合っていければいいなと思います。
そのためのたたき台として僕の経験をまとめました。
おおいにたたいてやってください。
そしてそれぞれの道を確かなものにしていってください。
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