会話を楽しむ音楽会
「歌声音楽会」はどんなカタチが望ましいのか。
長年あの手この手と試行錯誤をくりかえしてきた。
現段階で到達しているのが「会話を楽しむ音楽会」。
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演者が音楽やトークを「提供」するのは「会話」ではない。
ライブや歌謡ショーなどでは一方通行のそういうカタチもあり。
でも会話とは一堂に会して互いに話し合うこと。
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演者である自分が話のタネを投げかける形で歌や会話は始まる。
それを肴にして「会話」が生まれる。
さらに演者と参加者というかたまりのやりとりだけではなく、参加者同士の間にも会話が生まれる、膨らんでいく。
その会話が次の歌につながっていく。
この循環が次々と間断なくくりかえされていく。
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いわば「道しるべのない歌の旅」。
道草を食みながら、刹那刹那をつなげて目的のない「旅するための旅」を楽しむ。
そんな風なのが僕の理想とするカタチ。
それが「会話を楽しむ音楽会」だ。
そういう音楽会を「井戸端音楽会」とか「お茶の間音楽会」と称している。
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今現在こういう歌声音楽会をあちこちでさせてもらっている。
ベースになっているのは次の3つの歌声音楽会。
・デイサービスで10年ほど続けている「さんすまいる音楽会」。
・喫茶店JUNEでやはり10年近く続けている「歌声喫茶」。
・おーるどタイムでやっている「フォークの歌声音楽会」。
うれしいことにこの3つの音楽会では理想とするカタチで進められるようになっている。
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水先案内人の僕の役割は
①最初の出だしの歌と会話のきっかけを作ることと、
②会話の内容をうまく集約して次の歌につなげること、
③そして音楽会のラストを適切な着地点に軟着陸させること。
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あえてリクエストを募る必要はない。
なぜなら会話の中から自然に浮き彫りになってくるから。
浮き彫りになった複数の歌の中から選別すればいい。
(以前はリクエストを掘り起こすために色々策を弄し、四苦八苦していた)
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歌う楽しみだけではなく、会話すること自体もまた楽しみ。
歌と会話とがシームレスにつながり渾然一体となった音楽会になりつつある。
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ただ「会話を(も)楽しむ音楽会」をやるにはいくつか条件があるようだ。
①こじんまりとした小さな小さな音楽会であること。
参加人数が20人にもなると会話は成立しにくくなる。
②ひとつの場所で長い期間続けられていること。
音楽会のカラーが定着するには何年もの時間が必要だ。
③核になる参加メンバーが何人かいること。
そういう人たちがいることで初めての参加者への気配りが会全体としてなされる。
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「会話を楽しむ音楽会」にするために水先案内人として気をつけていることもいくつかある。
①己の存在を極力消すこと。
できれば空気のような存在でありたい。
司会者(水先案内人)の強い個性や仕切りで音楽会を運営していくのはどうもなじまない。
②道草話の中にも絶えずアンテナの感度を上げていること。
なんてことない馬鹿話であったとしても、その中に次の歌につながるお宝が潜んでいる。
それを見過ごさずにスポットライトを当てるためには感度良好でいなければならない。
③それらを保つために心はいつも開いていたい。
心を開いていなければ自分のこだわりや好みに左右されてしまうこともあり、独善に走る危険性が生まれる。
なんでもありの精神。Everythings OKだ。
④参加者全員をたえず視野に収めておくこと。
いろんな年代や好みの方が一堂に会する。
中には知らない歌、あまり好みではない歌を選別されることも当然起きる。
大人の集まりだからそういう状況ではにこにこしながら聴き手にまわったりしてくださる。
でもその状況がずっと続けば疎外感だって生まれる。
それを避けるため参加者全員を視野に収めておきたい。
音楽会全体を通して一人の取りこぼしも起こさないように交通整理したい。
歌声音楽会は参加者全員で作り上げられる時間・空間でありたいから。
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さんすまいる音楽会、歌声喫茶@JUNE、フォークの歌声音楽会の3本柱。
長い年月をかけてようやっと理想とする「会話も楽しむ音楽会」として定着しつつある。
そして五里霧中・暗中模索の中で試行錯誤をくりかえしてきたことは決してむだではなかったと思いたい。
試行錯誤をしてきたあれこれは、新しく始めた「井戸端音楽会@楽龍時」などにも活かしていきたい。
また時々お声のかかる出前コンサートにも活かされている。
さらにはショー形式のライブにも歌声音楽会の要素が自然と含まれるようになってきた。
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今のカタチが最終到達点かどうかは分からない。
この先変わっていくかもしれない。
変わることなく練度・精度が上がっていくだけなののかもしれない。
ただ何十年もいろいろ迷いながら歌い続けてきて、今もっとも心地いいのは「会話も楽しむ音楽会」というカタチ。
これが70歳時点でのひとつの到達点のように思える。
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