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2022.12.09

時計が再び動き始めた 絵本「おせちのおしょうがつ」の歌



10月に突然、懐かしい方から電話がかかってきた。
出版社・世界文化社の絵本制作部署のN女史だった。
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  古池さぁん
  「おせちのおしょうがつ」が重版を重ねてるんです
  今年15年目になるんで新装版を作ることになったんです
  そこで古池さんの作った「おせちのおしょうがつ」の歌を
  あらたに録音していただきたいんです
  それと楽譜も書いていただければ助かります
  カバーの折り返しに楽譜を載せて、
  QRコードで歌に飛べるようにするっていう企画なんです
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正直驚いた。
まさか再び、それも今頃になって絵本の歌に関わることになろうとは!
僕が印刷業界を去ってはや10年になる。
もうすっかり印刷とは縁が切れたと思っていた。
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15年前の秋、世界文化社発行の新刊絵本「おせちのおしょうがつ」の印刷に関わっていた。
印刷設計~印刷立ち会いまでが僕の守備範囲だった。
印刷立ち会いにはN女史も来られた。
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その道すがら、車中の雑談の中から絵本の歌を作ることになった。
絵本作家・ねぎしれいこ先生の文章にメロディをつけるというものだ。
やがてそれを元に書店や幼稚園などで「絵本コンサート」を開催するという販促企画にふくらんだ。
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絵本作家、出版社、印刷会社、書店と、印刷・出版業界の連携による企画は業界としては前代未聞の試みだった。
さいわい絵本コンサートは各処で好評を博することができた。
 

そして翌年、「おつきみどろぼう」という絵本でも同様の取り組みがなされた。
さらに翌年には「おうちピクニック」という絵本コンサートにつながっていた。
足かけ4年にわたり、絵本の歌3部作ができ、何度も絵本コンサートをさせてもらった。
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第1回 絵本コンサート@ジュンク堂池袋本店の記録
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装いも新たになった「おせちのおしょうがつ」を頂戴した。
懐かしい絵柄はそのままに、カバーの折り返しには楽譜が挿入されている。
「おうちピクニック」の新刊時にも楽譜を載せてもらった経験はあるが、あれから十余年の歳月が流れている。
しかもQRコードで歌にジャンプする仕掛けまで。
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うれしいような、怖いようなちょっと複雑な心境だ。
絵本コンサートの場合は歌ったその瞬間から消えていく。
でもQRコードを読み取れば自分の歌に飛び、それはずーっと残るものだからね。
煙のように消えていく「瞬間芸能」を旨としてきただけに、自分の音源が残されていくというのはちょっと恐怖だ。
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さて話しはこれだけで終わらなかった。
「おせちのおしょうがつ」を入稿し、ほっとしているとN女史からあらたな新曲作成の依頼が飛び込んだ。
ひな祭りをテーマにした新刊本のテーマソングだ。
さらに追いかけるようにして別の担当者・H女史からは幼稚園・保育園の卒園をテーマにした新刊本のテーマソング作成の依頼があった。

わずか2ヶ月の間にリメイク1曲と新曲2曲の作成に忙殺された。
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さいわいすべて納期内に入稿を終えることができた。
あとは共同印刷でかつてコンビを組んでいた営業担当・K女史と印刷現場の後輩たちが無事印刷・製本を終えてくれるのを祈るばかりだ。
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15年の時を経て、止まっていた時間が再び動き出したように思える。
直接印刷に関与することはもうできないが、なんらかの形で印刷につながっていられることはありがたいことだ。
そして僕を育ててくれた出版・印刷界へのわずかばかりの恩返しのように思える。
2022_12_07
2022_12_07-2

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