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2021.01.04

我が家の雑煮

今朝日本各地の雑煮を特集したTV番組を観ていてその多彩さに目を見張りました。
それに比べると我が家に伝わる雑煮のなんとシンプル(質素)なことか。
小松菜と焼き餅だけのこの雑煮が祖父母の代から100年以上も食べ続けている「古池の雑煮」です。
2021_01_01
北海道に古くから暮らしていたアイヌには雑煮を食べる習慣はなかったそうです。明治~大正にかけて内地から和人が大挙入植し、それぞれの故郷の味を持ち込んだのが北海道の雑煮の歴史だとか。だから家庭ごとにみな違った雑煮を食べているんじゃないかな。
我が家の場合、祖父母は明治37年に愛知県から北海道に渡りました。祖父19歳、祖母18歳。祖母のおなかにはすでに赤ん坊が宿っていたそうです。
身ひとつで入植した若き日の祖父母にとって、極寒の北海道での暮らしは厳しいものだったと思われます。
やがて祖父は函館の地で呉服関係の小商人として成功しました。
おそらく苦しい時代の記憶を忘れぬように質素な暮らしを家訓としたようです。
菜っ葉と焼き餅だけの雑煮はその中で生まれてきたものと想像しています。
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時代は流れ、昭和20年代後半。
父母は出会い結婚しました。
初めて「古池の雑煮」を食べた母はその質素さと不味さに「具合悪くなった」そうです。
母の実家ではちゃんと出汁をとり、具も柏肉(鳥肉)を主としたうまみのある雑煮。
嫁いだ身の母としては長年続く古池の習慣を拒むことはできませんでした。なにより小松菜雑煮に慣れた父は「菜っ葉の雑煮は餅の味が一番わかる」といって好んで食べたそうです。
母は一計を企てました。
小松菜と餅だけの雑煮の形はそのままに、(本家に内緒で)出汁をちゃんととるようにしたそうです。
昆布と鰹節でとった一番出汁は雑煮に使い、二番出汁は煮染めなどに使ったそうです。
見た目は「古池の雑煮」。されど味付けは「伊藤(母の旧姓)の雑煮」。
新たなる「古池の雑煮」の誕生です。
以来我が家では毎年「古池の雑煮」と「伊藤の雑煮」を日替わりで食べるのが習慣になりました。
(子供だった僕は「伊藤の雑煮」の鳥肉の臭みと三つ葉の苦みが苦手でした。)
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今僕は「古池の雑煮」と「伊藤の雑煮」を日替わりで食べるのが習慣になっています。
それぞれに旨い雑煮です。
でもやはり一番舌になじんだ小松菜雑煮が好きだなぁ。
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「水を飲むとき、その井戸を掘った人のことを思いなさい」という中国の古いことわざがあります。
正月に「古池の雑煮」を食べるたび、僕は温暖な愛知県から極寒の北海道に渡った祖父母のことを思うようにしています。
たかが雑煮、されど雑煮ってぇお話でした。

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