【記録】 喫茶店JUNE たそがれ歌声音楽会
秋深まる日曜の夕暮れ時、三々五々と集まり一堂に会する常連の皆様。文字どおりの黄昏音楽会。
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三橋美智也大特集から始まり、昭和30年代の流行歌を歌う前半戦でした。
参加者の皆様はその頃に思春期~青春期を過ごされています。(僕はその頃まだ幼少期でしたがラジオから流れる三橋美智也の歌は耳になじんでいます)
「リンゴ村から」、「夕焼けとんび」、「古城」、「星屑の町」、そして「哀愁列車」。(「達者でな」はハーモニーが難しく歌いきれませんでした)
皆さん遠い目で、そして嬉々としながら口ずさみます。
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思えば三橋美智也さんは昭和30年代の日本の空気をよく体現している歌い手ですよね。
戦後の混乱も落ち着き、復興に向かう昭和30年代。
多くの庶民は希望と期待を秘めながら日々を過ごしていた。
希望や期待の裏側には挫折や傷心もあったことでしょう。
三橋さんはそんな人たちの心にすっと入りこむ歌を歌っています。
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あの時代を経験した人には実感を持って響いてくるんでしょう。
田舎から積み出される真っ赤なリンゴに町へでた恋しい人のことを重ねたり、集団就職で都会にいった兄のことをトンビに問うたり、大切に育てた馬を町に売りに出す人の気持ち。
その時代ならではの哀感がただよう歌たち。
テレビやネット、そして飛行機や新幹線などの交通機関が発達し、狭くなった(近くなった)今の世ではなかなか生まれにくい情感なのかもしれません。
人生の黄昏を迎えんとしている参加者(僕自身もそのひとり)の皆さんには、若き日の自分を思い出す歌たち。
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三橋美智也を歌い終え、やがて昭和30年代の歌へと移っていきます。
ひとつひとつの唄に引き出されるそれぞれの思い出話しなども飛び出し、音楽会はゆったりしたテンポで進んでいきます。
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やがて古関裕而と「エール」の話しに。
やはり「栄冠は君に輝く」を歌う久志のシーンに皆さん感涙したご様子。
次回、12月は古関裕而大特集をやることになりました。
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後半は「さだまさしをマスターが大いに語り、僕は歌う」コーナー。
さだまさしがソロデビューした1976年(昭和51年)に焦点を当てます。世相と絡めながら語るマスターお得意の切り口でした。
そんな中で歌ったのは「案山子」「関白宣言」「雨やどり」。
そしてリクエストにお応えし、「秋桜」「無縁坂」。
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「案山子」や「秋桜」はライブテーマの1ピースとしてよく歌ってきました。
ところが他の歌はこれまでほとんど歌ってきませんでした。
どこかで苦手意識がはたらいていたようです。
何度も歌いながら準備をしましたが、なかなか気乗りがしませんでした。
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しかし不思議なものです。
いざお客さまを前にし、歌い始めたとたんにスイッチがバチッと入りました。
歌のストーリーの中に自分がはまり込み、演じていきます。
一節ごとに感情がゆらぐお客さまの視線に後押しされていくのがわかります。
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この体験で気づかされたことがあります。
僕が「関白宣言」や「雨やどり」に苦手意識を感じていたのは、歌いまわしが難しいと言うことだけではない。
自分が発したいと思うメッセージをそこに感じなかったためなんだと思います。
つまり自我というフィルターに引っかかり、そこではじかれていた。
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ところが自我を棄て、歌の世界に身を没することで、そのストーリーを演じることが出来る。
そしてそれは聴き手の放つオーラのようなものに後押しされて可能になる。
これは僕にとっては大きな気づきとなりました。
これまでもステージから自己顕示を排し、お客さまと気持ちをすりあわせることに腐心してきました。
そこからさらに1歩踏み込むことが出来たような気がしました。
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この後、越谷アビーロードで別のライブが入っていたので定刻の18:00で音楽会は終了しました。
いつもなら小一時間は「残業演奏」をするところです。
お客さまたちは事情をご理解くださり、快く送り出してくれました。
手をふり、「がんばれー!」と次のライブに向けエールまで送ってくださってね。
今回も充実した歌声音楽会となりました。
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