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2020.08.27

母と戦争 その2 薙刀

【母と戦争 その2 薙刀】

1昨年、母は特養・旭が丘の家で「看取りの季節」を迎えていた。
眠りと覚醒の狭間をただよっていた。やがて眠りの時間が日々の大半を占めるようになっていた。周囲からは親しみを込め「眠り姫」とよばれていた。


夏の暑い日だったと思う。
陣中見舞いに帰函していた僕はいつものように眠る母のそばでギターを弾いていた。

ふと気がつくと母の両腕が微妙に前後に動いている。
何度も何度もそれをくり返す。
目は半眼。醒めているのいないのか。

  ん?
  どうしたのさ?

そう問うと母はぼそりと答える。

  なぎなた...なぎなたさ...
  わたしは...なぎなたの方が...得意だ...

瞬間なんのことか分からなかった。

  竹刀は...にがて...
  なぎなたは...身体がおぼえてる...

「軍事教練」のことか!
分かるまでしばし時間を要する。

函館高女(函館高等女学校=現函館西高校)時代に受けた学校教練でなぎなたをやっていたのだろう。
たしかに大正15年生まれの母は女学生時代はまさに戦時下だった。

どうやら母は眠りの中で女学生にタイムスリップしていたようだ。

やせ衰え、骨と皮だけでカサカサの腕がかすかに前後に動く。
胸が突かれ、絶句する。

気を取り直し、詳しい話を聞き出そうと話しかける。
が、母は再び眠りに落ちていた。

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19242


写真は3枚は写真展「女学生たちの青春」より。
馬に乗る母は軍事教練ではないが同じ時代のものと思われる。

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