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2020.05.04

「チューインガムひとつ」 ~コロナ休暇の狭間で

昨日自転車を走らせながら頭の中を流れていた「チューインガムひとつ」

https://youtu.be/7T0H_bp28Js

灰谷健次郎が小学校教師だったころの試みのひとつに子供たちの作文活動があった。その中のひとつがこの詩だった。
高石友也がそれを歌に仕上げてレコーディングした。
これをめぐって灰谷さんは高石さんに猛烈に抗議したそうだ。子供の悲痛な叫びをレコーディングという形で商業化したことが許せなかった模様。
これが契機に二人は理解し合い、仲良くなったそうだ。

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この歌には苦い思い出がある。
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北海道から東京に出てきた最初の年、僕は駒場で下宿暮らしをしていた。いわゆる「三畳一間の学生下宿」だ。
常にお金がなく、たえず空きっ腹をかかえていた。
質素な下宿飯では20歳のあんちゃんの腹を膨らますことは到底望むべくもなかった。
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梅雨のころだったと思う。
学校まで行く定期を解約して得たわずかばかりのお金も底をつき、下宿の部屋に僕は沈殿していた。
バイト代が入るまでまだ数日ある。
井の頭線で二駅先の渋谷。デパート地下の食品売り場へつまみ食いしに行くにも雨続きの毎日。
財布を覗くと38円しか入っていない。
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  腹がへった
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2階の窓から狭い通りの向こうを見下ろす。
古ぼけたよろず屋が店を開けている。
なんでもいいから腹に入るものを買おうと思い出かける。
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よろず屋に置いてあった豆パンとあんパンそしてジャムパン。
みな1個50円。
足りない。
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逡巡する。
ドックン、ドックン。
早鐘を打つ心臓。
豆パンに手を出す。
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急いで店を出る。
すぐには下宿に戻らずあたりをさまよい歩く。
見つかるのが怖かった。
やがて少し落ち着き、部屋に戻る。
空腹ではあったがすぐには食べられない。
しばらく豆パンを見つめる。
やがて豆パンを頬張る。
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甘さが口の中に広がる。
急に涙があふれ出る。
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昨年、駒場に行ってみた。
住んでいた下宿先・A亭もよろず屋さんもすでになかった。
貧乏学生に優しかった立ち食いカレー屋・ビューは跡形もなかった。
吉祥寺に住んでいた弟と入った喫茶店チャンティックもすでになかった。(しっかり者の弟に僕は珈琲をおごってもらったのだ!)
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あれから45年の歳月が流れた。
でもその情景はいまだにべっとりと心の奥底にこびりついている。
「チューインガムひとつ」を聞き、忘れていたこの情景がぶくぶくと湧き上がってきた。
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コロナ禍で大学生たちもまた苦しんでいる。
バイトもできず日々の「食」ものしかかってくることだろう。
なんとか切り抜けてほしいものだ。

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