« 【さんすまいる歌声音楽会】 | トップページ | 歌い初めライブ 2020 »

2020.02.17

【耳を盗む】


おととしの今日、「お好み焼きの三貴ライブ」をやった。
久しぶりに納得のいく「通常営業中ライブ」になり、うれしくてアップしていた。
その前の月、僕は喧騒の中で己を見失い満足のいくライブにはなっていなかった。

.

「空気になること」

「共存すること」
そのために「己の存在を消すこと」

.

などが当時のキーワードだった。

.

.

昨夜、「歌い初めライブ」終了後に出演者・関係者たちと打ち上げを「お好み焼きの三貴」さんでやった。
その時話題になったのが、お好み焼き屋さんでのライブについての心得(?)だった。

.

 

音楽演奏の環境とはおよそ無縁の通常営業中のライブ。
その難しさと面白さについて語った。
歌を聴きに来たわけではないお客様に向かって歌う逃げ場のないライブ。(演奏者にとってもお客様にとってもね)

.

演奏する側にとって必要なことは、
まず何よりも己の弱気の虫と闘う勇気。
そのうえでお客様との共存を目指すこと。
そのためには己の存在を消して空気になること。

.

そうしながらもお客様の「耳を盗む」ことができるか否か。
全く聞いていないように見えていても、耳はこちらを向く。
そんな状態を作り出せれば、単なるBGMではなくライブとして成立する。
これが難しさと面白さ。つまり醍醐味。

.

そんな話をした。

.

そしてこの記事を再読して思った。

この2年間で変わったこと。
それは「空気になってお客様との共存をはかる」を前提に「耳を盗む」ことを意識するようになったこと。
より積極的に一歩進められたように感じる。

そのきっかけになったのが2年前のこの「お好み焼きの三貴ライブ」だったように思う。
.
ちなみに現在はアンプを使わず、生声・生ギターでやっている。
演奏条件は難しくなったが、生声・生ギターならではの表現方法がわかってきた。
そしてそれが「耳を盗む」ためには一役かっているように思う。
アンプによって増幅された音はややもすると押しつけになってしまう。
押しつけられた音に対し食事客の耳はそれをシャットアウトする。
それがここ数年ようやっとわかってきた。

.

 

.

【2年前の記事】

.

2018年2月17日

めずらしくガランとした店内。
オリンピックにやられた❔今夜の「お好み焼きの三貴ライブ」。
お客様は子連れママ友三人衆。いや小さな子供たちも三人。元気でかしましい。そして生演奏に興味津々。
なにやら話し込むアベック。二人の世界に没入中。
二人の男性は仕事の話を延々とやっている。どうやら比較的若い方が親会社で年配の方は子会社という関係のようだ。
そしてニッカーポッカと作業着で身をかためたおにいちゃんときゃぴきゃぴねえちゃんのカップル。
くわえて常連・松村くん。
店内静かなり。
演奏も音量を下げ淡々と。
.
「今日は空気になろう」
そう決めて声も張らず、トークも入れずにおのれの存在を消すように歌う。
選曲は決めず思いのままに。
この1曲が全て、何十曲もの「3分間ドラマ」を積み重ね、まるで歌の玉手箱。
お好み焼き屋さんでお客様と共存するのにストーリー性は不要なのかもしれない。ただ1曲勝負あるのみ。
そう考えたらストーリーやテーマに縛られない分幅が出た。
普段出番のない歌や、20年ほど前「ぶどうの木」時代にやっていたちょっとマニアックな歌や自作曲まで飛び出した。
お客様からは目立った反応はない。これでいい。
.
店の中の空気になって歌うとはこういうことだ。
ステージ席からは聴いていないようで聞いているのが手に取るように分かる。
ママ友三人衆も子会社のおじさんもチラチラこちらに視線を投げてくる。
子供たちはもっとストレート。
一番面白かったのはニッカーポッカのお兄ちゃん。にこりともせず、無論拍手など一切せずにじっとこちらをにらむように見つめている。
この視線は「うるせえ‼️やめろ‼️」というものではなく、じっくり聴いているもの。
お兄ちゃん、帰りがけに初めてニッと笑いかけてくれた。
子会社のおじさんも帰りがけに声をかけてくれる。
「よかったよぉ❗」
多分親会社の若いのに遠慮してたんだろう。
.
「これまで十数年、ここで古池さんの歌を聴いてきたけど、今日が一番良かったよ。
騒音の中で四苦八苦しながら何とかする古池さんもいいけどね。
なにしろ自然だった。
1曲、1曲の説得力が一番あったよ」
.
常連のMartin古池評論家、松村くんからはうれしい一言。
彼はこの13年、通いつめてくれた。僕のいいところも、良くないところも全て体感している。
「評論家」だけあって、耳に痛いこともつつみかくさず僕にぶつけてくる。
この一言は嬉しかった。
.
先月は喧騒の中で自分を見失い、失敗した。
今月は納得のいく「お好み焼きの三貴ライブ」となった。

 

 

 

| |

« 【さんすまいる歌声音楽会】 | トップページ | 歌い初めライブ 2020 »

三貴ライブ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 【さんすまいる歌声音楽会】 | トップページ | 歌い初めライブ 2020 »