「さんすまいる熟年歌声音楽会」
「さんすまいる熟年歌声音楽会」
真っ赤な太陽照りつける土曜の午前中。デイサービス「さんすまいる」。
いつものご老人たちは待ちかまえていた。
僕は今日やる歌の歌集を作っていたため、いつもより少し遅めの到着。
「暑さにやられて、今日はお休みするのかと思ったよ」
と、じいちゃん・ばあちゃんたちに迎えられる。
いや、まったく元気なご老人たちだ。
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最初の30分は夏の流行歌特集。
真赤な太陽~恋のバカンス~恋の季節~お嫁においで~夜空の星~蒼い星くず~夜空を仰いで。
一気に駆け抜ける。
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昭和40年代の流行歌だ。このころボクは思春期。ご老人たちは青春時代真っただ中。みなさん歌詞をほとんどそらんじている。(もちろんボクもだ)
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次の30分は夏にまつわる唱歌を集めた。
ボクが童謡・唱歌をやることは少ない。
以前から「老人には童謡・唱歌がいい」という発想に対する漠とした反発があった。
だから老人施設での演奏は自分とご老人たちが生きた共通の時代を基礎に選曲をするのが常だった。歌を共有するとともに時代を共有したいためだ。おのずと選曲は昭和30年~40年代の流行歌が多くなる。(唱歌の多くは戦前、戦後に作られたものが多い。童謡に至ってはそのはるか昔だ。)
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今回はこれまでのやり方をいったん横に置いて、真正面から唱歌に取り組むことにした。(今朝作った歌集はこの唱歌集だ)
夏は来ぬ~夏の思い出~海:3題~浜辺の歌~みかんの花咲く丘
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これらの歌ひとつひとつに皆さんとのおしゃべり。これが面白い。時代背景について語ったり、皆さんの思い出はなしが出てきたり、歌の解釈について思い思いにおしゃべりの花が開く。
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特に面白かった話題は「浜辺の歌」の解釈について。
明日(ゆうべ)浜辺を彷徨えば 昔のことぞ忍ばるる
1番も2番も冒頭は「昔のことを思い出している」
昔のことってどんなことなんだろうね。
恋歌なのかね。別れた人を思い出しているのかね。
いやいや、3番の歌詞に「病みしわれは すべて癒えて 浜の真砂 まなご今は」ってあるから「まなご」は我が子だから恋歌でもないよね。
この人は病気だったんだね。それが治って浜辺を彷徨いながら我が子のことを思ってるんだ。
そういえばこの歌、大正時代の歌。病気ってもしかしたら結核かもね。このころ「肺病」は死の病だったわけでしょ?
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妄想をたくましくしたらこんなことかなぁ。
肺病を患った女性が離縁され、浜辺の療養所に隔離されていた。幸いにも病は癒えたものの離縁された以上我が子に会うことも許されぬ。そんな哀しみがこの歌の背景に流れてるのかもね。
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各歌にこんな内容のおしゃべりをしながらの唱歌特集だった。
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最後に「19の春」のリクエストが入り、いつものように「上を向いて歩こう」で熟年音楽会は終了した。あっという間の1時間20分だった。
「上を向いて歩こう」はどんなにさみしく悲しい歌を歌っても最後は上を向いて歩いていこうという思いを込めている。
「みなさんお元気で。2か月後にここでまたお会いしましょう!」というごあいさつだ。
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音楽会終了後、三上所長から言われた一言がうれしかった。
「マーチンさん。今回はいつにもましてよかったですね。歌もよかったし、おしゃべりも中味が濃かった。みなさんの表情がイキイキしてました」
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長年背を向けてきた童謡・唱歌に正面から向き合えてよかったと思う。これからは自然体で歌えるような気がする。
次回は10月。秋の童謡唱歌も同じようにやってみようかしら。
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