今月の三貴ライブはハードな状況だった。
店内はほぼ満席状況。
年齢層は20代~30代と比較的若め。
職場がらみの4~5人のグループが数組。
それぞれの卓に話の中心人物がいて話に花が咲いている。
飲むほどに酔うほどにボルテージは上がっていく。
意識は仲間内に向けられ、外へ向けられることなどない。
当然歌を聴いてもらえる状態には程遠い。
仮にAグループとしよう。
一方で食事を中心とした何組かのグループ。
2~3人のこじんまりとしたグループで、食事をしながらおしゃべり。
時に歌に反応し、微笑んだり拍手をくれたり。
こちらはBグループ。
そしてライブを目的に来てくれる常連さん数人。
Cグループ。
毎回ABCのグループが混在する中で三貴ライブは進む。
その時々でABC各グループの構成比が違い、それに応じてライブの状態は大きく変わる。
今回はAグループが多い。しかもボルテージはかなり高い。
ギターの音がかき消され、聞こえない。
むろんスピーカーの音量を上げれば済むことだ。
でもあえてそれは避け、微調整程度にとどめる。
「通常営業中のサプライズ・ライブ」が三貴ライブの位置づけ。
お客さんの邪魔にならないことをまず考えなければならない。
その上でお客さんとの共存をはかり、
さらに共感につなげていくべきものと考えている。
いたずらに音量を上げると「やかましい!」ということになり、
お客さんに不快感を与えることになる。
Bグループにもいいイメージを与えない。
食事客と共存するには適当な音量がある。
大きすぎると拒絶反応をまねき、小さすぎると埋没する。
埋没するとお客さんとの交歓が成立しない。
(自己満足だけに陥りやすい)
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歌い始めの数曲はAグループに圧倒された。
負けまいという思いが先行し、強めのパフォーマンスで入ってしまった。
徐々に軌道修正し、ターゲットをBグループにしぼる。
食事とおしゃべりの邪魔をせず、歌が自然に耳に入っていくという感じだ。
Aグループの圧倒的な喧噪のなかではそれもなかなか難しい。
平常心を保ちながら、1曲1曲をしっかり丁寧に歌うことを心がける。
(心が折れたら、その時点でライブは終わってしまう)
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1部は日本の歌アラカルト。
2部はカントリー・ソングを中心に洋楽を。
店内の喧噪はライブ終了まで変わることがなかった。
その意味では精神的にくたびれたけれど、随所でBグループからの反応をもらえた。
くわえてAグループのひとりからP.P.Mのリクエスト。
仲間うちでにぎわっていても、全く無視されているわけでもないんだと思えるうれしい瞬間。
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【闘い済んで、つわものどもが夢のあと】
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「お好み焼きの三貴ライブ」はまもなく9年目に入る。
われながら毎月よく続いていると思う。
数年前までは武者修行・道場と思っていた。
聴く体勢にない人たちが多い中で歌うということは、それだけで猛烈なストレスだった。
「アウェイをホームに変える」と意気込んで臨んでいた。
「艱難汝を珠にする」だ。
反面で店に到着するまでの30分ほどの道のりはストレスで吐き気を覚えたり、胃が痛くなることもしばしばだった。
逃げ出したい衝動と闘いながらの道のりだった。
ライブが楽しいという感覚よりも、自分に課した修行という感覚の方が強かった。
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ここ1,2年、ライブへの臨み方に変化が出てきた。
三貴で歌うのがごくごく当たり前のことと受け止めるようになってきている。
見知らぬ人の前で、聴く体勢にない人も多い中で歌うこと
そのこと自体が自分のライブのスタイルだと思うようになっている。
「あたりまえの状態」
それはもう修行ではなく「日常」だ。
その時々の条件のもとで何ができて、何ができないのか
そんなふうに問題の立て方に変わっている。
慣れも多少はあるかとは思う。
でもこの意識の変化が何よりも大きいような気がする。
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今、三貴ライブが楽しいかと問われると答えに窮する。
(実際そう問われることがある)
でも苦しさが無くなったのは事実だ。
その状態をして「楽しさ」かといえば、ちょっと違うような気がする。
なにしろライブ中はある意味無我夢中。
楽しいと感じる余裕は正直ない。
ライブを終え人気のなくなった店でスタッフとお好み焼きをつつきながら、
ようやっとじわーっと充足感を感じている。
一所懸命やった結果、いい点も失敗もそっくりそのままありのままに受け止められる。
それが充足感につながり、時間差で「楽しさ」に変わっていくのかもしれない。
この先また心境の変化があるかもしれないが、
今はそんな気持ちで三貴ライブを続けている。
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最後にお店のスタッフの皆さんについて。
長年この場で歌い続けられたのはお店の支持・支援・ご協力・心くばりがあってのこと。
それがなければ8年も続けられるもんではない。
深く感謝するとともに、この先も二人三脚で少しでも長く続けられるように頑張りたい。
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