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2016.12.02

家庭用インクジェットプリンターでハガキに写真を印刷するのは難しい

久しぶりに印刷の話を。
といっても長年関わっていたオフセット印刷ではなく、家庭用プリンターでの印刷。

モノクロ写真をインクジェット用ハガキに印刷をしたところ、撮影データのままだと真っ黒につぶれてしまった。
それは予想していたことだったけど、予想をはるかに超えたつぶれ具合だった。...
特に中間~シャドウのつぶれ具あうは半端ではない。真っ黒で暗い印刷になってしまう。(印刷用語でいうところのヤレ=不良品だ)

理由はいくつか考えられる。

まず紙の問題。
インクジェット用ハガキとはいえ紙の表面の凹凸があることに変わりはない。紙の表面にインキがノッタ後毛細管現象でインキの色素が紙の中に吸い込まれる。インキ被膜に凹凸ができ激しい乱反射をおこし、結果としてつぶれが発生する。
これを防ぐには紙を変えるしかない。
コーティングしたり鏡面加工を施し用紙表面の平滑度の高い紙を選ぶしかない。
そういうハガキがあるにはあるが、ハガキとしては仕上がりの品が悪く好みではない。
なんとかインクジェットハガキに印刷する手立てを考えなければならない。

次の問題は平滑度の低い紙にモノクロ写真を印刷するということだ。
一般にカラー印刷の場合、いくつかの色に撮影データを分解して色再現をする。
オフセット印刷の場合はYMCK(黄・紅・藍・黒)に分解し4色で刷り重ねる。
家庭用プリンターの場合は撮影データはRGB(赤・緑・青)。実際のプリントでは5色~6色の刷り重ねで色を再現している。色素も明るさを強調できる染料タイプ。(オフセットは粒子の大きい顔料)
色分解されたそれぞれのデータは軽いものに抑えられる。だからつぶれは生じにくい。(ディスプレイに表示された色と、紙に印刷された色のに違いが生じるという問題はあるが)

対してモノクロ印刷には「色」の要素はない。黒と白の諧調表現があるのみだ。(実際の家庭用プリンターでは他の色も使ってモノクロに見せている)
この「諧調」ってやつがモノクロ写真の命であり、厄介なシロモノでもある。
0%(白)~100%(黒ベタ)で表される(トーンカーブ)。PCなどのディスプレイで写真を見る分にはそのままでもいい。
でも紙に印刷するとなるとこのトーンカーブをいじってやらなければ違った仕上がりになってしまう。
違った仕上がりというのは上記の調子(諧調)のつぶれや、毛細管現象によるインキ表面の凹凸からくるドライダウン(インクの盛りが弱く感じられる現象)だ。

調子のつぶれが一番目立つのは中間(50%)近辺。
明るさ(ライト~中間)、暗さ(中間~シャドウ)が段階的につぶれていく。
(オフセット印刷では印刷をするときに圧力がかかるためドットゲインも考慮しなければならない。紙の上でインキの粒=網点がつぶれる。結果最もつぶれやすいのは70%近辺といわれている)
白いところは白く。黒いところは黒く。その間をなだらかな諧調でつないでいくのがモノクロ写真の印刷なのだが、実際にはこうはいかない。
明るいところは薄汚れた印象になり、薄暗いところは真黒になってしまう。

そこでトーンカーブをいろいろいじってみた。
まず中間(50%)の部分を10%程度落としてみた。
試刷りでは幾分明るくなった程度。
次に中間はそのままに75%近辺を落としてみた。
試刷りではだいぶつぶれが無くなったが、なんとなく薄汚れた感じがぬぐえない。
そこでこの状態からさらにライト~中間も落としてみた。
結果はまずまずの再現にはなった。でも自分のイメージとはまだ離れている。
さらに2回ほど微調整をくりかえし、やっとこ「まあ、こんなもんか」と思えるところまできた。
ディスプレー上には撮影データとは似ても似つかない画像が写っている。まるで幽霊写真だ。

たった1枚のモノクロ写真のハガキを印刷するのに試刷りに5枚もハガキを使ってしまった。
オフセット印刷と家庭用インクジェット印刷では印刷の仕組みがまるで違うので、同列に考えることはできない。
でも色再現や諧調再現という視点ではオフセット印刷技術担当時代に培った考えやノウハウが役に立った。

久しぶりに印刷屋に戻ったような気がする。

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