清津峡 春の陣 2 静かなるひととき
キャンプ前半、清津峡には静かな時間が流れていた。
時が止まっているかのように感じることがここではしばしばある。
まさにそんな感じだった。
明るいうちからちびりちびり。
ギタをつま弾き、なれしたしんだ歌を口ずさむ。
小さな焚き火をつつきながら友とぼそぼそ語り合う。
とってもすきなひととき。
「優しい時間」とでもいうのだろうか。
何者にも代えがたいひととき。
キャンプ飯は楽しみのひとつ。
一人旅の時は簡単にさっと済ませるのが常だった。
この10年、仲間たちとともにキャンプをするようになってからはだいぶ凝るようになった。
家族できていた頃のようにいろいろ手をいれ工夫している。
とはいってもしょせん山料理の延長。たいしたものは作らない。
なにしろ清津峡は体に背負えるものしか持ってこられない。
中には大きなザックにギターをくくりつけ、肩からでかいクーラーボックスをぶら下げて来る豪の者もいるけれどね。
僕のやり方はその時居合わせた仲間たちが持ち寄った食材で何ができるか考えて作る。
自分も食材はあれこれ持っていくけれど、友の持ってきたものも遠慮なく使わせてもらっている。
できあがったものをみんなでつつきながら食べるメシがうまいのは、味そのものよりも自然の空気というスパイスが効いているためだろう。
夜の帳が降り、あたりが闇に包まれる。
空気も冷え込んでくるころ、あちこちで盛大に焚き火が始まる。
闇の中に妖しく揺れる炎は美しい。
夕飯を終え、のんびりしたあと片手に酒瓶、片手にギターを持ち管理棟の前テーブルにふらふらと遊びに行く。
まるで蝶や蛾が灯りに集まるように、テーブルに揺れるランプの灯りに集まっていく。
飲みながら、歌いながら、しゃべりながら始まる宴。
30年前から変わらぬ光景。
それ以前から管理棟前の宴はお約束だった。
先代管理人・清津の仙人は時々毒舌を吐きながらみんなのおしゃべりを見守っていた。
この宴にギターや歌を持ち込んだのは僕だった。
仙人のクラシックギターを借りて歌ったのが最初だった。
最初はお客さんのおしゃべりの合間に歌うという感じだった。
何年か経ち、歌の集いのように変わりそれが「丑三つライブ」につながっていった。
テーブルを囲むキャンプ客だけではなく、闇の中のテントやバンガローからリクエストの声がかかるようになり、すっかり定着した。
仙人が亡くなり、息子のアキラッチが跡を継いでからも「丑三つライブ」は続いた。
この「丑三つライブ」がやがて「Live in 清津峡」につながり、現在のように音楽キャンプのようになっていく。それについてはまたの機会に。
キャンプ場の朝はすがすがしい。
ちょっとひんやりした空気。
木々の間を朝の光が差し込む。
僕の好きな時間だ。
今日はにぎやかな仲間たちが集まってくるはずだ。
ドンチャン騒ぎの前のひと時の静寂はいいもんだ。
静かなるひとときに身をまかせたキャンプ前半だった。
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