あそぶ 清津峡雑感
この春、清津峡はたいそうにぎわった。
いろんなグループがバンガローに泊まったり、テントを張ったり。
広いキャンプ場がたくさんの人で埋めつくされた。
人の数だけ多彩な遊びに目が惹かれた。
一番の大所帯は品川子供劇場の若人たち。
先輩劇団員から受け継がれてきた遊び。
それはキャンプファイアーだったり、ドラム缶風呂だったりと多彩。
親子連れのキャンパーはまだ冷たい川で釣りを楽しんでいる。
何時間もねばって、タイムアップ5分前にやっと釣り上げた虹鱒。
嬉しそうに、誇らしげに見せる小学生。
ベテランキャンパーたちのグループは地べたに敷いたシートの上でひたすら眠る。
昼も夜も眠る。
自然の懐で眠ることが彼らの最大の遊びなのかもしれない。
清津峡の申し子と呼ばれるタロウちゃん。
今回は初めてキャンプをするという仕事仲間とそのお子さん連れてきた。
なにくれと面倒をみながらキャンプの楽しさを伝えている。
竹を割り、節をくりぬき、流しそうめん。
清津のキヨシローはロードレーサー(忌野清志郎モデル)で走ってきた。
谷底のキャンプ場までそれをかつぎおろす。
例によって清志郎を歌う。「Live in 清津峡」の時よりずっとリラックスしている。
いつもは飲んでは、はしゃぎ歌うたけちゃん。
今回はみやこちゃんと七輪の炭火番をしながらあれこれ焼く。
たこ焼きやら餅やら柴ちゃん差し入れのヒモノやらを。
そう、今シーズンから清津峡には七輪が常備されるようになったんだ。
1棟だけ設置された薪ストーブ。
その炎を見つめる若者たち。
竹で弓矢を作り的うちに興じる子供たち。
そば打ち職人、むねちゃんはタケノコ掘りに余念がない。
ほとんどをイノシシに食われ、わずかに生き残ったタケノコ。
清津峡で採れた木の芽や山椒と和え、みごとな逸品に変わる。
佐藤さんたち家族連れはおしゃべりに余念がない。
いつものように大がかりなキャンプ料理を作り皆にふるまう柴ちゃん。
今回は前夜から煮こぼして下準備をしてきた手のこんだ牛すじカレー。
釜でご飯を炊くことに全神経を集中する人チャボさん。
この地で飲むのを楽しみにいろんな銘柄の酒を担いでくるhirommiさん。
酒をペットボトルに入れ替え、酒のラベルを貼り付けて持ってくる。
それが肴に酒が進む。
昨年からキャンプに目覚め、ものすごい勢いでキャンプに興じるぺぐさん一家。
そしていつものように思い思いにギターやウクレレを奏で歌う面々。
今回僕は焚き火に燃えた。
山の中からタキギになる枯れ木を探し、引きずり運ぶ。
適当な大きさに折り薪を作る。
半日かけてそんな作業をくりかえし、燃やすのはわずか2時間程度。
この2時間にすべてをかけた。
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何もない清津峡。
だからこそあれこれ工夫していろんな楽しみを見つけだす。
それぞれの得意分野だったり、イメージしていたものを形にしようとすることだったり。
道具や電気や便利なものがあればなんてことない。
何もないから普段よりも時間も手間もかかる。
当然うまくいかなかったりする。
でもそれが楽しみでもあったりする。
何もない空間に置かれた時、人は工夫して楽しみや遊びを見つけだし、作り出す。
思い思いの楽しみ方をするキャンパーたちに心のしなやかさを感じる。
日常生活では誰もが効率や合理性、便利さの追求の中に身を置いて暮らす現代人。
多かれ少なかれ誰もがそうだろう。
ここに来た時くらいはそんなものをかなぐり捨てたいと願うのだろう。
あえて便利さとは逆のことをやろうとする。
もっとも重い荷をかつぎ、山道を谷底まで下る。
それ自体がすでに便利さや効率とはあいいれない。
でもあえてそうすることで心のバランスを保とうとしているのかもしれない。
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清津峡に来ると時々子供の頃のことを思い出す。
戦争の傷跡から立ち直り、高度経済成長の入り口にようやっと立った頃だ。
東京タワー建てられ、東京オリンピックが開催され、夢の超特急が走り始めた時代だ。
ニュースは景気のいい話で賑わっていた。
田舎で暮らす子供達には遠い世界のできごとであり、まばゆい憧れだった。
裏を返すと何もなかった。
何もない子供達は工夫していろんな遊びを考え出した。
新聞紙を丸めた刀でチャンバラごっこだったり、かくれんぼや缶けり鬼だったり、月光仮面を真似て割り箸と輪ゴムで拳銃を作ったり。釘さしなんてのもあった。
雪融けの坂道にできた轍を流れる水。せき止めてダムを作ったりもした。
時折走ってくる自動車にせっかく作ったダムが決壊し、大急ぎで補修する。
そんなことを飽きもせず延々とくりかえしていた。
清津峡で過ごすゆったりした時の流れ。
それは子供の頃の時の流れと同質のもののように思えるのは僕だけだろうか。
仕事にプライベートに忙しい日常が常態化し、時は怒涛のごとく流れていく。
『年をとると時間が早くなる』
そう年寄りに言われ続けてきた。
どうやらそれも本当のようだ。
だからこそ時には子供の頃のゆったり流れる時間に身を置きたいと切に願う昨今だ。
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コメント
虹鱒を釣った親子です。(笑)
今回は、清津狭の自然とギターの音色と歌声でまたまた魅力的なキャンプになりました。
また、お会いしましょう!!
「オレのニジマスすごいだろ~」息子談
投稿: 金本伸ちゃん | 2013.05.11 19:39
金本さん。
コメントをありがとうございます。
そして清津峡ではいい時間を共有させていただきありがとうございます。
短いけどああしてかわすことのできた会話、
とてもうれしいものですし、ありがたいものです。
またぜひご一緒しましょう。
息子君によろしくお伝えください!
投稿: Martin古池 | 2013.05.12 13:01