たき火
早朝、寒さで目覚めた。
5月の清津峡にしてはめずらしく冷え込む。
昨夜の激しい通り雨でテントの中は浸水ぎみで身体が少々濡れていたせいもある。
(20年使ってきたテントのポールが折れ、フライシートがほとんど役立たずになっていた)
テントから這いだし、火をおこすことにした。
集めておいた焚き木もずぶぬれ。
久しぶりに気合を入れたたき火。
ライターで杉の枯葉に着火しようとしたが濡れていて火がつかず、あきらめた。
新聞紙をゆるく丸めて火をつける。
炎が出てきたところで杉の枯葉に火を移す。
なんなく燃え移る。
湿った地面に置き、炎の上に杉の枯れ枝を追加してかぶせる。
水気を含んだ白い煙が登り、後を追いように炎が上がる。
火床になる杉の枯葉が20センチくらいに燃え広がったところで炎の中心に細い枝を地面に立てるように追加する。
細枝にからみつくように炎が上がる。
燃え移った頃合いに今度は細い枝を横に置く。
火床の枯葉はすでに50センチくらいにまで燃え広がり、白い煙は青く変わっている。
横に置いた小枝に火が移ったところで、やや太めの枝を数本やぐらを組みように縦に置く。
すぐに燃え移るので今度はやぐらの中に太めの枝を横置きに追加していく。
最初の杉の枯れ枝や細い枝は燃え尽き、しっかりした火床になっている。
ここまで来ると火が消えることはもうない。
あとは太い枝や丸太を追加し炎を大きくしていく。
この時意識するのは縦横の関係。
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沢登り中の飯盒炊さんで、山の先輩に教えられた名言がある。
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たき火のコツは風の通り道を作ること
風の通り道はやがて炎の通り道になる
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たき火をじっと見つめていると、そのことがよくわかる。
炎は枝にからみつくように上がっていく。
枝と枝が接するところで横に燃え広がりながらさらに上がっていく。
枝と枝の隙間が風の通り道であり、炎の通り道だ。
この隙間がたくさんあれば(枝と枝の接するところだ)火が火を集め、より大きな炎となり力強く燃え広がる。
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山のように集めた枯れ枝を2時間ほどの間にすべて燃やしつくした。
炎をぼんやり眺める。
ただそれだけのために焚き火をする。
無駄といえば無駄な行為だが、かけがえのない贅沢なことのように思える。
何も考えず、ぼんやり炎をゆらぎやゆっくり流れる時に身をゆだねるとき、心が満たされていくのを感じる。
心が満たされること、これは最高の贅沢だろう。
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日常の暮らしの中で(街の暮らしの中で)火をおこすことが無くなってすでに久しい。
子供の頃は毎朝七輪で火をおこしていた。
風呂も薪から焚いていた。
秋から冬には毎朝石炭ストーブに火を起こしていた。
(これらは子供の仕事で、凍てつく寒い朝デレッキ(火かき棒)片手にいやいや火を起こしていた。火が石炭に燃え移りストーブの周りが暖まってくるとほっとしたものだ)
暮らしの中に「火をおこす」行為はあたりまえにあった。
あたりまえすぎて火のありがたみをあらためて感じることもなかった。
世の中は豊かになり、いろんな面で進歩した。
より快適に便利に暮らせるようになった。
自分自身その便利さ、快適さを享受しながら暮らしている。
便利さ・快適さが当たり前の暮らしにすっかり慣れきってしまった。
でも時々ふと不安に感じることがある。
なにに対して不安になるのかはわからないが、漠とした不安を覚える。
そんな時清津峡に来て火をおこす。火を眺める。
心が静まり、安らかな気分になる。
年に数回、30年近くくりかえしてきた儀式のようなものだ。
これからも山道(緑のタイムトンネルと仲間うちではよんでいる)の登り降りができる体力がある限り続いていくことだろう。
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【アラカルト ~ 清津の火】
かまどで飯を炊く。今回は6合。水加減、火加減が難しい。
ちょっとべたっとした仕上がりだった。
水が多めだったか、火を落とすのが早かったか。
でも充分すぎるほど旨かった。
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管理棟前のかまど。
キャンプ場管理人・アキラッチがおこした火。
手際の良さにほれぼれする。
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柴ちゃんが持ってきてくれた干物を七輪で焼く。
さば、ホッケ、ツボダイ。
どれもこれもみな旨い!
炭火のやさしい火でじっくり焼くせいだろう。
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七輪ついでにたけちゃん持参のたこ焼きセット。
表面はカリカリ、中味はトロリ。
これも旨かった。
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炭火で焼く餅の旨さったらない。
なにもつけず、このまま頬張るのが最高。
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古竹で焚いたドラム缶風呂。
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品川子供劇場の面々によるキャンプファイアー。
漆黒の闇に燃え上がる炎が幻想的。
火のまわりで歌い、踊る若者たち。
高揚感に満たされ、なかばトランス状態か?
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