峠で歌う
「あすなろ山の会」恒例の土俵岳お花見山行。
今年も笹尾根上、土俵岳直下の日原峠でミニミニコンサート。
「あすなろ山の会」のメンバーはかれこれ30年の長きにわたり、僕の歌を聴き続けてくれている。
最強のサポーターに囲まれて歌えるうれしさ。
そして最高のロケーション。
「峠」ってなんとなくいい感じ。
山の上と下が合わさるところ。
いくつかの細い山道が交差し、淋しい山中で人のぬくもりを感じられる峠。
旅人たちはきつい登り下りをくりかえし、ほっと息をつき腰を下ろす。
見知らぬ者どおしが喉をうるおし、一本つけながら語り合う。
そしてやがて分かれていく。
お気をつけて
そう気づかいながら。
出会いと別れの峠道で歌えることの幸せ。
柔らかい春の陽射しと、尾根渡る風の心地よさ。
かさばるギターを背負いあげて、いくつもの山を越えてやってきた疲れも癒される。
僕は峠道に象徴されるような、出会いと別れのはざまで歌うことが好きだ。
やがてはそれぞれの道をたどり、別れゆく者どうし。
せつなの出会いを楽しみ、愛おしむ。
そんな瞬間を歌で飾ってあげられるなら、これ以上の幸せはない。
今年は日原峠恒例のミニコンサートのほかに、番外編ともいうべきちょっとした出会いがあった。
数馬から牧寄山を経由して笹尾根まで登った。
標高差400メートルを一気に登るけっこうキツイコースだ。
肩に食い込むギターの重みに耐えながら、ようやっと稜線上の峠に飛び出した。
肩で息をしながら一本つけていると、三頭山方面から7~8人のパーティが歩いてくる。
みな僕よりちょっと上のおばさんたち。
ギターケースをものめずらしそうに眺め
おにいさん
山の中でギター弾くのかい
すてきだね
ちょっと聴かせてよ
断る理由などどこにもなく、さっそくギターをケースから取り出して歌う。
2~3曲のつもりだった。
そこに尾根の反対側から歩いていた4~5人の別のパーティが合流。
気がつくと30分近く歌っていた。
みな先を急ぐはずだし、僕自身集合時間にたどり着くのがあやしい時間だった。
それでも自然発生的なミニ演奏会がうれしかった。
いい山歩きになったよ
気をつけていきなさい
ありがとう
毎年4月の第2日曜日の昼に日原峠で歌うんだね
来年はコース取りをそれに合わせて聴きに行くからね
そう言葉を交わしながら三方に分かれていく。
たぶん二度とお会いすることはないだろう。
でも一刻でも、来年また聴きたいと思い、声をかけてもらえる。
ありがたく、うれしくて・・・
歌い手冥利に尽きるというものだ。
別れの後
しあわせな気分を感じながら、友の待つ日原峠に歩を進めた。
あすなろの歌について
「風の便り」より
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