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2013.04.10

ありがとうございます。そしてさようなら。

今思えば・・・

最も脂がのり、一番ナマイキな時期だった。

40代のはじめ。

仕事に自信が持てるようになった頃。

あっちにかみつき、こっちに吠えていた。

こわいものなしだった。

相手が協力会社の社長だろうが、社内の部課長だろうが、
おかまいなしに自分の考えを開示していた。

「武闘派」といえばカッコもつくが、要は向こう見ずの無鉄砲。

当然の帰結として「敵」も少なくなかった。

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扱いにくい部下だったと思う。

生意気盛りの自分を「しょうがねえなぁ」という顔で見守ってくれていた。

時に組織の枠を飛び越え、他の部門からおしかりを受けることもあり・・・

それでも影でかばってくれていた。

まあまあまあ
あれはあれで人材なんだから
よろしく頼むよ

てなあんばいで。

そんな彼を僕は当時「俗物」と思ったりもした。

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時は流れ、彼は部長職をしりぞき、五霞の子会社に出向していった。

僕は僕で自分の「分」と、思い上がりを知る年頃になっていた。

「俗」と感じていたものが「懐の深さ」と感じられるようになっていた。

生意気な輩を潰さず切り捨てず、育ててくれていたんだ。

そう感じ取れる年になっていた。

感謝した。

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さらに時は流れた。

印刷業界は業態が大きく変わり始めた。

僕は印刷会社を辞め、あらたな挑戦をせんがため1年に渡る人生浪人をしていた。

次の仕事が決まった昨年3月、彼が完全退職しリタイアするという話を聞いた。

長年の礼をしなければ気が済まなかった。

車を走らせ、五霞の工場を訪ねた。

おお、どうした
仕事は決まったか?

そう出迎えてくれた彼と桜を眺めながら、しばし語り合った。

オマエくらい扱いにくいヤツもそうはいなかったな
フジケンとE村とオマエには手を焼いた
まあ、いいおもいでだ

屈託のない笑い顔が焼きついた。

陽射しが暖かだった。

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突然の訃報が届いたのは一昨日。

わが耳を疑った。

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斎場までの道のりは20年前、彼を乗せて時折走ったコースを選んだ。

第×美術~A文社~△美術~□印刷~KP辞書~○西印刷・・・

廃業して今はもうない印刷会社の跡地をつなぎながら車を走らせる。

当時の想い出が次から次へと浮かんでくる。

斎場に着くのが怖かった。

彼の遺影を見たくはなかった。

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弔問客の焼香が終わり、人影もまばらになった斎場で静かに手を合わせる。

まるで雲の上を歩いているようなふわふわした感じ。

外に出るとE村さんが煙草を吸っている。

件の「問題児」のひとりだ。(僕の1年先輩になる)

短く会話を交わし、握手をする。

ギューッとありったけの力で握りかえしてくるE村さん。

彼の無念さをその手に感じる。

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タイコーさん。

   新井大幸さん。

静かに眠ってください。

ありがとうございました。

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