ひとつの別れ 「喫茶いずみ」にて
蒲生の「喫茶いずみ」が改装のため今月いっぱいで一時閉店する。
時を同じくして長年厨房で料理を作ってきたYちゃんが退職する。
店の内装、そしてYちゃんとの別れがさみしい。
ともに先代の故・鶴岡マスターや故・ママさんの記憶に連なっている。
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あいさつがてら「いずみ」に行ってきた。
好物のカツカレーにするか、本日のランチ・ハンバーグにするかさんざん迷う。
うーん!カレーも食いたいし、ハンバーグも旨そうだ
迷うなぁ・・・
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先週はカレーだったよね
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じゃ、今日はハンバーでいくか
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いつもYちゃんとくりかえしてきた会話を今日も同じようにくりかえし、ハンバーグに決める。
いつものようにぺろりとたいらげ、いつものようにぼそりとつぶやく。
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旨い・・・
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いつものようにYちゃんは応えてくれる
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古池さんはきれいに食べてくれるからうれしいな
コーヒーはちょっとしてからですよね?
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うん、ハンバーグの余韻味わってからね
何年も何年もくりかえしてきた会話だ。
それも今日でおしまいなのはお互いにわかってる。
わかっているがそのことはお互いおくびにも出さずくりかえす。
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食後のコーヒーを味わいながら、思うともなく思う。
何と言って別れの挨拶をかわそうか・・・。
ふと高倉健さんの映画の1シーンが思い浮かぶ。
思いを胸にしまいこみ、言い出しかねながらぼそりとつぶやくシーン。
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ありがとう・・・
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コーヒーを飲み終え帰り仕度を始める。
それまでいつものようにふるまっていたYちゃんは急に姿勢を正す。
共にに退職する女の子と二人でカウンターの中に整列し、頭を下げる。
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ありがとうございました
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先に言われてしまった。
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何を話して別れを告げてきたか、記憶にさだかではない。
さだかではないが、健さんのようにカッコ良くなかったことは確かだ。
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この店に通い始めて30年。
たくさんの出会いと、たくさんの別れをくりかえしてきた。
別れのたびにさびしさをくりかえしてきた。
そして今日また一つの別れが。
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4月。
「喫茶いずみ」は新装なってふたたび開店する。
またあらたな出会いが待っていることだろう。
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