竹ぇにたんざく七夕まつり
今年もやってきた七夕さま。
残念ながら今宵も曇り空のようで、天の川は観られそうにない。
子供の頃、七夕の晩を心待ちにしていた。
浴衣に三尺を締め、手にもった提灯にろうそくを灯し、仲間たちとともに町内を1軒ずつ練り歩く。
竹ぇにたんざく たなばたまつり
おおいはいやよ ろうそく1本ちょうだいな
くれなきゃ かっちゃぐぞ
1軒ごとに歌いながらろうそくをもらって歩く。
北海道に伝わる風習だ。
夕暮れ時を待ちかねた子供たちが三々五々と集まる。
夕暮れの薄明かりが徐々に闇にぬり込められていく。
ご飯を炊く匂いがかすかに鼻孔をくすぐる。
夏を前にしたかわいた風がろうそくの炎をゆらす。
カランコロンと下駄の音が夜道にこだまする。
低学年のうちは市販の提灯を持つだけでもうれしかった。
学年が進むにつれ空き缶に取っ手をつけたカンテラの自作に凝りだす。
たなばたさまの1週間も前からひそかにカンテラを作りはじめる。
友だちとそのデキを競うのが楽しみだった。
時間にすると2時間程度なんだろうが、長くてあっという間の小さな旅だった。
50年も前の話だ。今とはずいぶん事情が変わっている。
街中ではなく函館山の麓、坂道の上に住んでいたこともある。
今のような明るい夜ではなく暗闇の世界だった。
電信柱の小さな灯りがポツンポツン灯る。
家々の窓からこぼれる灯りも薄暗かった。
(蛍光灯の灯る家はまだ少なかった)
闇の世界に身を置くことが許された数少ない行事、それがたなばたまつりだった。
夜の闇は畏れであり憧れでもあった。
一面の暗闇。
山の端にかかる星明り。
ほのかにうごめくろうそくの炎。
闇と灯りのおりなす怪しげな魔力。
いまだに忘れることができない。
キャンプをしながらたき火の炎を眺めながら思うことがある。
たき火が好きなのは
星空を眺めるの好きなのは
散歩が好きになったのは
たなばたさまのおかげかも
今宵は夕暮れ時から空を見上げながら歩こうかと思っている。
提灯の代わりにストックをもって。
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