別れの時が近づいて
3月いっぱいで長年勤めてきた印刷会社を退職する
いわゆる希望退職、早期退職だ
長引く不況の中で多くの印刷会社が基礎体力を失いつつあり
生き残るために何らかの手を打たなければならない状況に置かれている
当社も大幅な人員削減を余儀なくされ、年配者や不採算部門を中心に多くの人員が退職することになった
共に退職する技術班の同志たちには共通の「痛み」がある
「技術の継承」を自分の代で途切れさせてしまった
師匠や先輩諸氏から受け継いできた歴史
それらを次代に伝える前に退職する悔しさ、もどかしさ
これが「痛み」として「傷跡」として心の中でうずいている
昨夜、当社の出版営業に招かれた
「送別会」という名の壮行会だった
献杯から始まったこじんまりとした酒宴だった
予想以上に多くの中堅・若手営業が集まってくれた
ひとりひとりがねぎらいの言葉を我々に送ってくれた
共通することがあった
共に手を携えてクリアしてきたひとつひとつの仕事の中に学ぶべきものがあったということだ
それはルートにのってなされただけの仕事からは決して得ることのできない満足感であった
うれしかった
そういう「手探り、手作りの仕事」を通して彼らは我々からなにがしかのことを受け継いでくれていたのだと思えた
無論それは「技術の継承」ではない
けれど底に流れる「心意気」の点では共通のものだ
彼らは営業の立場から
ひとつひとつの仕事に対する我々の姿勢や心意気を感じ取り、
共感し、受け継いでくれていた
うれしかった
お客さんが喜んでくれるものを作りたい
これはものづくりの基本だと思う
受注産業である印刷業は仕事の底辺にこの思いがなければいけない
「顧客満足・品質第一」というスローガンはそれがあって、はじめて生きてくるのだと思う
帰りしな、節電で暗い夜道を歩きながらある営業からこう話しかけられた
昔、古池さんが言っていた言葉の意味が
最近分かるようになりました
あの頃は現場のいいわけだと思ってましたけど・・・
お客さんの要望を100%満たせることが理想
でも機械的、物理的にそれを満たすのが難しいのが印刷
仮に80%のデキだったとしても、限界まで挑戦し
それを通してお客さんに納得、満足してもらえた時
80%は120%になる
それを付加価値という・・・
うれしかった
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