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2010.12.23

技術者としての満足感を感ずる印刷立会い

会心の印刷立会いをさせてもらったのは久しぶりのことです

入稿時から尋常のやり方では印刷できない予感がありました
お客様のEB社もそれを感じていたようで、当社営業を通して早々と品質管理の要請を出されていました



EB社の仕事は昔から特殊な仕掛けを要する印刷が求められてきました

・特色(既製インキではない、特別に調合したインキ)を駆使する
・印刷の刷り順を通常とは違ったものにする
・印刷適正の低い特殊な紙を使う
・その他もろもろ

いわば印刷屋泣かせの仕事が多い出版社です



カラー印刷はほとんどすべての色を
黒・青・赤・黄の4色に分解して
刷り重ねることで色再現をします

この4色を標準色といい、印刷機もこの順番でセットされています


今回の仕事は標準色を使用せず特色を6色刷り重ねる内容でした

・蛍光イエローの2回刷り
・その上に濃度の高い特色黒+特色の淡いオレンジ+ホワイトインキ
・最後にニスという透明の表面保護インキ

加えて表面がぼそぼその紙


普通に印刷したんでは、まずうまくいかないことが予想されました

・6色機で同時印刷したのではインキの皮膜が厚くなりすぎ、インキどうしがくっついてしまう
・それぞれのインキの特性上インキが紙に乗りにくい
・特殊な紙での印刷再現が未知数


ポイントはホワイトインキがばっちりと白く見えることでした

実はこれが難しい
ホワイトインキは濃度が低くて下地が透けて見えやすいのです
黒のインキの上に刷ったのではグレーっぽく見えてしまう

そこであらかじめホワイトの刷版を2版用意しておきました
白の色が出ない時に2回刷りするためです


印刷は5色機を使い、2回に分けて印刷しました
印刷というよりも版画の刷り重ねの発想です

前日の夜勤で蛍光イエローを2度刷りして乾かしておきます
翌日お客様の立会いのもとで他の4色を刷り重ねます


案の定ホワイトのインキをいくら出しても白くなりません


  うーん
  これじゃ、ぜんぜん話になりません
  なにか手がありませんかね(客)


  じゃぁ、ホワイトを2回刷りにしてみましょう(僕)



30分後・・・


  おお、だいぶ白くなった
  でももっと白くしなきゃ意図のようになりません
  この白はペンキが飛び散ったイメージなんです(客)


  ぺ、ペンキですかぁ?
  それじゃこの印刷方式じゃ無理がありますよ
  シルク印刷とかにしなきゃ、質感がだせませんよ(僕)


  そうなんですよねぇ
  なにぶん予算がねぇ・・・(客)

   (註:シルク印刷の方がインキを分厚く盛れるが、価格が高い)

  
  分かりました
  限度一杯までインキを盛りましょう



10分後・・・


  おお、白くなりましたね(客)


  特盛つゆだくですから(笑)
  そのかわり、この状態が維持できるのは
  いいとこ3000枚までです
  それ以上刷ればインキがあまり過ぎて刷れなくなります(僕)


  印刷枚数が3200枚ですから、大丈夫ですかねぇ・・・(客)


  もたない時は一度リセットして、
  ローラーを洗いますから、ご心配なく
  でも、重版がかかって50000枚なんてことになったら
  ちょっとえらいことですけどね(僕)


  あ、だいじょぶ、だいじょぶ
  そうあってほしいけど、ありえませんから(笑)
  それよりも、白くはなったけど・・・
  このぶつぶつした感じもう少しなんとかならんでしょうか(客)


  うーん・・・
  これは難しいなぁ
  ぶつぶつ感の原因は紙なんですよ
  紙の表面があらすぎて、インキが食いつかないんです
  ホワイトインキは普通より固いインキなんでその弊害が大きい
  普通のコート紙で試しに刷った物がこれです
  同じ条件だけど紙が違うとこんなになめらかになります
  これだとペンキっぽいでしょ(僕)


  うわぁ、紙の違いでこんなにも再現が変わるんですか
  どうしようかなぁ
  これでデザイナーは納得するかなぁ・・・(客)


  別の手を試してみましょう
  今ホワイトインキは2回刷りしてますでしょ?
  そのうち1回目のホワイトを手直しします
  インキを薄めてやわらかくします
  やわらかくするとインキの流れが良くなります
  その上で紙にかける圧力(印圧)を強くしましょう
  紙の凸凹のところにうまく流れ込んでくれれば
  ぼそぼそ感は多少緩和されるかもしれません
  ただ、その場合白さは多少落ちるかもしれません(僕)


  ぜ、ぜひお願いします(客)



10分後・・・


  お!
  なめらかになった!!
  白さも悪くない!!
  OKです
  これで進めてください(客)




帰りの車の中で一人・・・

ほっと一安心し、胸をなでおろしていました
なんとかお客様のイメージに近づけることができて良かったぁ
物理的にも技術的にも難しい仕事だっただけに、喜びはひとしおでした




お客様とやる印刷立会いには難しさと面白さが同居しています

まずなによりお客様の求めているイメージをいち早くつかみ共有すること
これができなければ印刷は迷走します
お客様のイライラ感をつのらせることになります

さらにお客様の求めるイメージを印刷物に再現するために、即座に手を打つこと
結果が目で見て分かるようにすること


それでもイメージと刷り物にギャップは必ずあるものです
ギャップを埋めていくと同時に、ぎりぎりの線でギャップを受け入れてもらえるようにすること

たがいに納得しあいながら、
「一緒に印刷物を作っていく」というのが理想かもしれません

だからどんなに優れた印刷技術を会得していても、必ずしもいい印刷立会いにはならないと思います

一番大切なのはお客様に納得していただくことであり、喜んでもらえること

それには技術の研鑽はもちろんですが、
お客様と気持ちを合わせて進めることがとても大切な要素だと思っています


難しいことではあるけれど、うまくいった時は無常の喜びを感じます




  ありがとうございます


満面の笑みでそう言ってくれたEB社・編集Sさん

こちらこそありがとうございます
おかげさまで、楽しくいい仕事をさせていただけました

この一言、この笑顔が
技術者にとって最高の満足であり、最高の報酬かもしれない

そんなことを思いながら夜道、車を走らせました

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