たのしくも手ごわかった「おつきみどろぼう 絵本コンサート」
川越のひまわり幼稚園で絵本好きの子供たち40人ほどとお母さんたちが集まってくれた「絵本コンサート」
世界文化社が発行し、僕が印刷立会いで関わった3冊の本の読み聞かせと歌のコンサートだ
3冊とも作家先生の書かれた本の一節に僕が曲をつけて歌っている
季節の節目に開いてきた「絵本コンサート」はすでに3年、5回目になる
今回は十五夜も近いので「おつきみどろぼう」という絵本をメインに
「おせちのおしょうがつ」「おうちピクニック」も折り込んだコンサート
「おつきみどろぼう」「おせちのおしょうがつ」の作家・ねぎしれいこ先生
「おせちのおしょうがつ」の画家・吉田朋子先生も駆けつけてくれた
コンサート会場の庭に面したテラスは子供たちとお母さんでいっぱいだ
秋とはいえまだまだ強い陽射しがさしこむ
子供たちの額には汗が光る
絵本の読み聞かせ(お二人の世界文化社・ベテラン女性編集者が担当)の前後を歌ではさんでコンサートは進んでいく
絵本好きの子供が集まっただけあり、読み聞かせを食い入るように見つめる子供たちの目が印象的
僕の役割は絵本のイメージをより印象的に歌でサポートしていくものと心得ていた
コンサートは順調に進んでいった
しかし30分を経過したころから子供たちにちょっと変化が表れだした
絵本を3冊読み終え、歌に入ったあたりからだ
それまで食い入るようにステージを見つめていた子供たちの個性が出始めたのだ
絵本好きな年中さんだ
3冊の読み聞かせが終わり、集中力が途切れてきたこともあるんだろう
僕のトークに絡んでくる子供が出てきたり、行儀よく体育すわりしていた陣形が崩れてきたり…
僕にしてみると願ってもいな展開ではある
お行儀よく最後まで聴いてもらえるコンサートは物足りない
素の状態の子供たちとやり取りしながら進めたかった
ところが!
とんでもない失敗を犯してしまった
僕の一言一句に対して妙に絡んでくる女の子が一人いた
そんなの知ってるもーん
みみずなんかかわいくないもーん
etc...
この子は途中まで、読み聞かせも歌も食い入るように見つめていた子だ
なぜ、急に態度を硬化させたのか?
その訳はすぐにわかった
「おうちピクニック」の時にある坊主頭の男の子が話の内容に楽しいリアクションを起こしてくれた
雨が降らないように
てるてる坊主を作ればいいじゃーん!
僕は瞬間的に彼に反応していた
おお、そうだよな
てるてる坊主だよな
君はてるてる坊主みたいだな
かわいいな!
まわりの子供たちがいっせいに彼の頭をなで始める
その子は照れたような顔をしてされるがままにしている
座が和んでいく
普通のライブであればそのままいい方向に流れていくところだ
ところが、その直後からだ
件の女の子がからみだしたのは
失敗した
そう思ったがもう取り返しはつかない
「私のことも、もっと見て!」
その子はそうメッセージを発していたんだ
無視したり、聞き流したりすることはできない
かといって、その子の「ゴネごと」に追随し迎合してもいけない
どうしたものか、この後の進め方に一瞬躊躇し、判断に迷った
結局、僕のとった態度とその後の進め方はこうだった
コンサートの進行の妨げになるようなごね方に対しては鋭い視線を投げかける
そこまででもない「自己主張」に対しては笑って聞き流す
そうすることでスムーズな進行を確保しつつ、他の子供たちにも目を配ることができる
そのかわり、エンディングの「ハエ・ハエ・ハエ」のリフレーン部分でこの子のことを一生懸命見てあげることにした
もちろん最大級の笑顔で
「ハエ・ハエ・ハエ」
気合が入った
誰も知らないこの歌だが、リフレーン部分を何度もくり返すうちに一緒に歌いだせる歌だ
これまで子供ライブで何度も何度も窮地を救ってくれた歌
なんとしてもこの歌の中に子供たちを引っ張り込みたかった
そうしなければ、「ゴネ子ちゃん」に最大限の笑顔を送ってあげられない
中途半端にそれをやれば、他の子供たちもいい気持ちはしないはずだ
1番~2番は、全員にさりげなく「♪ハエ・ハエ・ハエ!」の刷り込みを図る
席から立ち上がり、子供たちにぐっと寄って歌う
セリフの部分で一気に距離をつめる
勝負の3番!
しゃがみこみ、件の「ゴネ子ちゃん」に目と鼻の先まで顔を近づけて歌う
「ゴネ子ちゃん」はどぎまぎ
僕は最大級の笑顔
1フレーズに過ぎないのだが、とてつもなく長く感じる
本当の勝負はこの後だ
「ゴネ子ちゃん」を「特別扱い」したわけだ
吉と出るか凶とでるか
立ち上がった僕は全員一人ひとりにウルトラ最大級の笑顔で歌い続ける
はたして!
それまで自信なげに歌っていたリフレーン「ハエ・ハエ・ハエ!」をしっかりした声で返してくれる!
何人かの子供たちは縦ノリのウェーブまで見せてくれる
みんないい笑顔だ!
安堵した
心の底からホッとした
ああ、よかったぁ
たくさんのことをいや本質的なことを子供たちから学ばせてもらった
子供たちは決して「達」ではない
ひとりひとりの子供なんだ
当たり前の話なんだが、わかっていたはずなんだが
本当にはわかっていなかったのかもしれない
そして、それは大人相手のライブでも同じこと
「お客さん」でくくってしまっちゃいけない
ひとりひとりの集まりが「お客さん」だってことを
肝に銘じた
大人は自制心も備わっているし、全体的にものごとをつかめる「ゆとり」も備わっている
でも子供たちはまず自分から始まるものだ
つまらなければ情け容赦なくそっぽを向く
ステージの進め方の問題点がモロ表面化し暴露される
「子供相手のライブは難しい」
多くの人がそう言う
僕もまたそう思う
人間社会の縮図が萌芽とはいえ、むき出しの状態でそこにあるからだ
きれいごとが通用しない、情け容赦のない世界とも言えそうだ
相手が子供だからこそ、全心全霊を傾け
真正面から自分をぶつけなければならない
「子供たち」にそのことを再認識させてもらった
ありがとう
【PS】
コンサート終了後、たくさんの子供たちが僕に握手を求めてきた
一緒に写真を撮ってもらった
買い求めた絵本にサインもせがまれた(これはお母さん方)
ハイタッチやハグを求める子もいた
(中にはほっぺたにチュッとしてくれた女の子もいた)
最後の方になって「ゴネ子ちゃん」が一人でやってきた
照れたような笑顔を浮かべながら
握手をする
頭をなでる
ありがと
そう、言い残してきびすを返した
世界文化社が発行し、僕が印刷立会いで関わった3冊の本の読み聞かせと歌のコンサートだ
3冊とも作家先生の書かれた本の一節に僕が曲をつけて歌っている
季節の節目に開いてきた「絵本コンサート」はすでに3年、5回目になる
今回は十五夜も近いので「おつきみどろぼう」という絵本をメインに
「おせちのおしょうがつ」「おうちピクニック」も折り込んだコンサート
「おつきみどろぼう」「おせちのおしょうがつ」の作家・ねぎしれいこ先生
「おせちのおしょうがつ」の画家・吉田朋子先生も駆けつけてくれた
コンサート会場の庭に面したテラスは子供たちとお母さんでいっぱいだ
秋とはいえまだまだ強い陽射しがさしこむ
子供たちの額には汗が光る
絵本の読み聞かせ(お二人の世界文化社・ベテラン女性編集者が担当)の前後を歌ではさんでコンサートは進んでいく
絵本好きの子供が集まっただけあり、読み聞かせを食い入るように見つめる子供たちの目が印象的
僕の役割は絵本のイメージをより印象的に歌でサポートしていくものと心得ていた
コンサートは順調に進んでいった
しかし30分を経過したころから子供たちにちょっと変化が表れだした
絵本を3冊読み終え、歌に入ったあたりからだ
それまで食い入るようにステージを見つめていた子供たちの個性が出始めたのだ
絵本好きな年中さんだ
3冊の読み聞かせが終わり、集中力が途切れてきたこともあるんだろう
僕のトークに絡んでくる子供が出てきたり、行儀よく体育すわりしていた陣形が崩れてきたり…
僕にしてみると願ってもいな展開ではある
お行儀よく最後まで聴いてもらえるコンサートは物足りない
素の状態の子供たちとやり取りしながら進めたかった
ところが!
とんでもない失敗を犯してしまった
僕の一言一句に対して妙に絡んでくる女の子が一人いた
そんなの知ってるもーん
みみずなんかかわいくないもーん
etc...
この子は途中まで、読み聞かせも歌も食い入るように見つめていた子だ
なぜ、急に態度を硬化させたのか?
その訳はすぐにわかった
「おうちピクニック」の時にある坊主頭の男の子が話の内容に楽しいリアクションを起こしてくれた
雨が降らないように
てるてる坊主を作ればいいじゃーん!
僕は瞬間的に彼に反応していた
おお、そうだよな
てるてる坊主だよな
君はてるてる坊主みたいだな
かわいいな!
まわりの子供たちがいっせいに彼の頭をなで始める
その子は照れたような顔をしてされるがままにしている
座が和んでいく
普通のライブであればそのままいい方向に流れていくところだ
ところが、その直後からだ
件の女の子がからみだしたのは
失敗した
そう思ったがもう取り返しはつかない
「私のことも、もっと見て!」
その子はそうメッセージを発していたんだ
無視したり、聞き流したりすることはできない
かといって、その子の「ゴネごと」に追随し迎合してもいけない
どうしたものか、この後の進め方に一瞬躊躇し、判断に迷った
結局、僕のとった態度とその後の進め方はこうだった
コンサートの進行の妨げになるようなごね方に対しては鋭い視線を投げかける
そこまででもない「自己主張」に対しては笑って聞き流す
そうすることでスムーズな進行を確保しつつ、他の子供たちにも目を配ることができる
そのかわり、エンディングの「ハエ・ハエ・ハエ」のリフレーン部分でこの子のことを一生懸命見てあげることにした
もちろん最大級の笑顔で
「ハエ・ハエ・ハエ」
気合が入った
誰も知らないこの歌だが、リフレーン部分を何度もくり返すうちに一緒に歌いだせる歌だ
これまで子供ライブで何度も何度も窮地を救ってくれた歌
なんとしてもこの歌の中に子供たちを引っ張り込みたかった
そうしなければ、「ゴネ子ちゃん」に最大限の笑顔を送ってあげられない
中途半端にそれをやれば、他の子供たちもいい気持ちはしないはずだ
1番~2番は、全員にさりげなく「♪ハエ・ハエ・ハエ!」の刷り込みを図る
席から立ち上がり、子供たちにぐっと寄って歌う
セリフの部分で一気に距離をつめる
勝負の3番!
しゃがみこみ、件の「ゴネ子ちゃん」に目と鼻の先まで顔を近づけて歌う
「ゴネ子ちゃん」はどぎまぎ
僕は最大級の笑顔
1フレーズに過ぎないのだが、とてつもなく長く感じる
本当の勝負はこの後だ
「ゴネ子ちゃん」を「特別扱い」したわけだ
吉と出るか凶とでるか
立ち上がった僕は全員一人ひとりにウルトラ最大級の笑顔で歌い続ける
はたして!
それまで自信なげに歌っていたリフレーン「ハエ・ハエ・ハエ!」をしっかりした声で返してくれる!
何人かの子供たちは縦ノリのウェーブまで見せてくれる
みんないい笑顔だ!
安堵した
心の底からホッとした
ああ、よかったぁ
たくさんのことをいや本質的なことを子供たちから学ばせてもらった
子供たちは決して「達」ではない
ひとりひとりの子供なんだ
当たり前の話なんだが、わかっていたはずなんだが
本当にはわかっていなかったのかもしれない
そして、それは大人相手のライブでも同じこと
「お客さん」でくくってしまっちゃいけない
ひとりひとりの集まりが「お客さん」だってことを
肝に銘じた
大人は自制心も備わっているし、全体的にものごとをつかめる「ゆとり」も備わっている
でも子供たちはまず自分から始まるものだ
つまらなければ情け容赦なくそっぽを向く
ステージの進め方の問題点がモロ表面化し暴露される
「子供相手のライブは難しい」
多くの人がそう言う
僕もまたそう思う
人間社会の縮図が萌芽とはいえ、むき出しの状態でそこにあるからだ
きれいごとが通用しない、情け容赦のない世界とも言えそうだ
相手が子供だからこそ、全心全霊を傾け
真正面から自分をぶつけなければならない
「子供たち」にそのことを再認識させてもらった
ありがとう
【PS】
コンサート終了後、たくさんの子供たちが僕に握手を求めてきた
一緒に写真を撮ってもらった
買い求めた絵本にサインもせがまれた(これはお母さん方)
ハイタッチやハグを求める子もいた
(中にはほっぺたにチュッとしてくれた女の子もいた)
最後の方になって「ゴネ子ちゃん」が一人でやってきた
照れたような笑顔を浮かべながら
握手をする
頭をなでる
ありがと
そう、言い残してきびすを返した
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