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2010.09.01

九十九里浜 ひとり キャンプ

海に行きたかった
とにかく海に行きたかった

ワケなどなかった
今行かなけりゃ、この先海辺でテントを張ることなどない
ただそんな衝動に突き動かされていた

海に行って何をする?
何をするかなんて、考えていなかった

いやむしろ海に行っても何もしない
その方が大切に思えた

ひとりで潮風の中でぼんやり時を過ごす

それだけが目的のようなものだ


凝視することをやめようと思った
耳をそばだてることをやめようと思った
考えることもやめようと思った

極論かもしれない
意思を持つことすらやめようと思った



はたして
そんな状態になれたのか?

なれたともいえるし、なれなかったともいえる



夏の終わりとは思えぬ直射日光の下で
海につかり、波間を漂った
何時間も、何時間も

意思が働いたとするならば流されないようにすることだけだった


夕方の刻々と変わりゆく浜辺の景色の中
分単位の変化にただ身を置いていた

青い空に秋の雲がたなびく
青が少しずつ赤に染まっていく
夕日は山の端に落ち、オレンジに変わっていく
やがて夕暮れの群青が忍び寄る


人っ子ひとりいない
波が磯にぶつかりはじける音
飛び散るしぶき


それも見えづらくなるほどの夕闇があたりを埋めていく

なお動くことなく、その場に座り込んでいた





闇の中をテント場に戻る

懐中電灯を頼りに、七輪に火をおこす
米を炊く
現地調達した肉と魚を焼く


意思を積極的に働かせた唯一の時かもしれない


腹を満たすためだけの食事を終え、
そのまま椅子に腰を下ろす


七輪の中のほのかに燃える炭を眺め続ける
何時間もたったような気がする

ふと思い立ってギターを取り出し弾いてみる
ただつま弾くだけ、
いやになりやめてしまう
歌などただの一度も歌うことはなかった


思った

  俺は無人島にひとりでも
  ギターは持っていかないだろう
  聴く人もいないのに…
  ギターなんぞ持っていってどうするんだ
  心の慰みになんかなりゃしない



時が経ったのか、経たないのか
分からず、闇の中で七輪の灯りを見つめていた


遠くに聞こえる波の音
そこかしこから虫の声
空にまたたく星の海



ひどく孤独を覚える
やたら人恋しい


そんな自分を見つめる、別の自分
ささやきかける

  いいんだよ
  お前にはこのさみしさが必要なんだ
  何も考えるな、ただここにいろ


バーボンの酔いがまわりはじめる
いよいよ何も考える気力がなくなる

やがて七輪の火も落ち、ほのかな冷気が忍び寄る





気がつくと、空はすでに白んでいる

シュラフカバーを身体に巻きつけてそのまま眠っていたらしい

残り火をかき集め火をおこし湯を沸かす
珈琲を落とし、一口すする

水平線から太陽が頭をのぞかせる

身体も心も温まった気になる



  今日は
  少しは気力を奮い立たせよう





  結局オレは
  何のためにひとりでここまで来たのかな
  でもいいさ
  自分の行動に説明をつけようなんて
  そんなことはやめっちまえ


  衝動に駆られ、心のままに動いた
  めったに出来るこっちゃない
  それができた
  それだけでいいべさ

  それだけで充分だべさ

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小さな旅」カテゴリの記事

コメント

理屈っぽく無い世界の良さを理屈っぽく語る。
ユニークで面白いと思います、

投稿: 赤蝮 | 2014.08.20 22:00

へっへっへ、赤蝮さん。
なんともおはずかしい。
時々理屈やまじゃくに合わないことをついやってしまします。

投稿: Martin古池 | 2014.08.21 00:21

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