音楽実験の場としての「唄の駅」
今回の「唄の駅」に参加するにあたり、テーマを設けてみました
20分のミニドラマ仕立てにする
テーマを決めて歌とおしゃべりでストーリーをつないでいくやり方です
40代の頃よくやっていたライブ方法です
きっちりシナリオを作り、45分の芝居仕立てのライブにしてました
45分あれば充分にステージを組むことが可能でした
(今思えば饒舌に過ぎたきらいもありますが…)
20分の枠の中でテーマをどこまで表現できるか
今回の大きな課題でした
余分なものをそぎ落とし、どこまで表現できるか?
テーマは「二十歳の原点」でした
二十歳の春、僕は北海道から東京に移り住みました
駒場は三畳一間の学生下宿でスタートした東京暮らし
いろんな意味で自分の転機になりました
そのターニングポイントのあれこれを、「唄の駅」に集う仲間たちに聞いてもらいたかったのです
(同じような青春を過ごされた方も多いと思われたので)
起承転結の歌を決めることから始めました
「結」はすでに決まっていました
「唄の駅」、今回の全体テーマ「沖縄に絡む唄」でした
これにつながる『さとうきび畑』が「起」です
問題は当時の暮らしの中からどうやって『さとうきび畑』につなげていくかでした
その年の夏
僕はギターをかかえ広島~長崎~佐世保を旅してました
旅の終着点・佐世保の海を眺めながら…
エンタープライズ寄港のことを思い
ベトナム戦争を思い(まだ終結していませんでした)
沖縄を思いました(まだ本土に「返還」されていませんでした)
貧乏学生の自分は旅の費用を工面のため、バイトに精を出しました
旅費には足りるはずがありません
バイトで稼いだ金のあらかたは日々食べるために消えていったのですから
故郷の親に教科書・教材費といつわって捻出させたに違いありません
(親不孝にもその辺の記憶はすっかり抜け落ちています)
夢をさがして都会に来たが思い通りに行かぬ毎日、つい弱気になり故郷を思う
そんな唄を選曲しました
貧乏な若者の日常を描いた唄は数多くあります
当時のムードをうまく表現した名曲「さみしい気持ちで」を選びました
ここまで決まったのは次の通り
起 ・・・・・
承 『さみしい気持ちで』(加川良)
転 『故郷』(松山千春)
結 『さとうきび畑』(森山良子)
ところが「起」の唄がどうしても浮かんでこない
そんなある日、家で『チューインガムひとつ』を歌っていました
お店屋さんでチューインガムを取ってしまった女の子がつらい胸のうちを吐露するという唄です
突然息子がドアを開け
とうちゃん、頼むからその歌は歌わないでくれ!
そうでした
息子もまた小学生の頃「びっくりマンチョコ」をくすね、見つかってしまった経験があったのです
幼い息子に若い父親の僕はどう叱り、どう諭していいのか分かりませんでした
ただただ二人であてもなく線路沿いに歩き続けたのです
一言も話すことなく
僕は沈黙の行進を続けながら思い出していました
自分にもよろずやさんから豆パンをくすねた経験があることを
それは僕の「二十歳の原点」の時でした
大人になった息子が今でもつらく感じているように
ぼくもまたその出来事を忘れられずにいました
そしてこの時つながったのです
「起承転結」が
「起」の唄を『チューインガムひとつ』に決めました
小さな万引き事件が沖縄の戦争の唄に結実する
なんとも強引な話です
でもこの飛躍を20分の小さなドラマに仕立ててみたかった
4つの唄をつなぐトークも必要最低限に抑えるべくあれこれイメージを積み重ねました
実際の本番演奏では時間の関係で15分の枠内に収めることになりました
残念ながら「転」の『故郷』を削らざるをえませんでした
その分「承」の『悲しい気持ちで』を即興でふくらませ、足りない部分をトークで補う形になりました
反省点はトークの饒舌さが前面に出てしまったことです
結果的に制限時間の15分をオーバーしてしまいました
(ごめんなさい!)
「語らずとも語る」という境地にはなかなかいけないもんです
でもこのテーマに取組んできたことには満足しています
20分の枠を最大限に活かすために一生懸命考えた経験は、必ずどこかで活きてくるように思います
「唄の駅」のメンバーの皆さんがそれぞれに自分の課題やテーマを追いかけながら臨んでこられます
その成果を感じさせていただくことは、楽しくうれしいものです
僕にとってこれが今回のテーマと取組みでした
次回の「唄の駅」は7月11日(日)
あと2週間しかありません
今回のようなミニドラマステージは組めないと思います
でも、また何かテーマを見つけて挑戦したいと思います
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