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2006.02.13

引き算の美学

『江戸前の旬』 という漫画に、興味深いくだりがありました。

  和菓子の細工は
  単純で、一見幼稚に見えるが
  それは「引き算の美学」だと
  わたしは思ってます…

  小さな細工を足して本物らしく見せるのが「足し算」で
  不要な物を引くことで
  
単純でありながら本物のように見せる…
  それが「引き算の美学」です

  そしてそれこそが菓子職人の技だと私は思っています

  細工寿司も…
  工芸和菓子も…
  見た目の美しさだけでなく
  中身に心という味付けがあってこそ
  人は笑顔で食してくれる…

技術を過信し親方のもとを去った弟子が、長い遍歴を経てふたたび親方のもとに…

けれど、親方の前に顔を出すことができずにいるのを

主人公の寿司職人、旬が細工寿司を握らせます。

この細工寿司を食べた親方は、

細工を見て弟子が握ったものだとすぐ分かり…

厨房にいる弟子に聞こえるようにさりげなく語った言葉です。

物語はこの後親方が弟子に大声で叫びます。

帰りたかったら、いつでも帰って来い!

お前はいつまでも…

俺の一番弟子なんだからな!

弟子は引き算に徹した細工寿司をつくり、親方に今の思いを告げ…

涙のうちに幕となります。

・・…………………

この漫画を読んでいて僕にも思い当たることが…

音楽も同じだなと思うことがあるんです。

音楽シーンが饒舌になりすぎているような気がしてならないんです。

やたら音をかぶせて分厚いアレンジにしていくのがはやり。

1990年代あたりからその傾向は顕著ですよね。

結果的に、音楽の中の言葉の部分が追いやられているような印象を強く感じます。

僕はギター1本と歌だけでやっているので、分厚くしようと思っても限度があります。

それでも、余分な音を入れているなと感じることがしばしばあります。

音を引いて、さし引いて、本質だけで勝負できればいいなと思います。

でもこれってけっこう難しい。

たとえば僕と同じスタイルのストリートミュージシャン、

ほとんど例外なくギターをかき鳴らしているようです。

気持ちはよくわかるんだけどね…

ギター1本だと不安になるんです。

でも客観的に見ると美しくない。

というよりあまり言葉が伝わってこない…

言葉が伝わらないということは、心が伝わらないということにも通じるわけで…

不要な物を引くことで

単純でありながら本物のように見せる…

それが「引き算の美学」

高田渡の音楽が「引き算の美学」に通じるように思います。

なにしろ、彼の演奏は5弦、6弦のベース音だけで成り立っちゃうんだから…

すごいよね!

1~4弦は指が動いてるのに聞こえてこない!

聞こえなくても、高田渡の言葉とそこに込められたものは

そこはかとなく伝わってくる…

僕にあのスタイルを真似ることはとても…

あれは渡ちゃんだからいいんでね!

あらためて、自分の音楽を見直そうという気持ちにさせられます。

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コメント

今晩は。

「引き算の美学」というのは、やはり東洋的・日本的思考の要素として、
根源のような要素の一つだと思います。
「美」と言う概念を、形而上に共有しようとすること。
実体の曖昧なものに、普遍性のある形を与えようとする行為だと考えます。

・・・え~、哲学的な議論はヤメにして(笑)、
酒を片手に今度ゆっくり感性の交換をしましょうネ。

投稿: MATSUMURA | 2006.02.13 23:21

MATSUMURA君

箱庭の世界だよね。
小宇宙というか…

近々、一杯やりましょう!

投稿: Martin古池 | 2006.02.14 10:19

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