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2006.02.04

協力印刷会社の研修会に出席して

当社の外注協力会社で作る組織があります。

親睦会的な緩やかな組織ですが、

2ヶ月に一度のペースで外部の講師を呼んで研修会活動をしています。

僕は協力会社に対する発注職場で15年間

技術指導を担当してきました。

3年前に、この発注職場を離れ、

品質の設計職場に移りました。

この段階で協力会社との直接の関係は終わりました。

ありがたいことに、いまだに研修会に声をかけてもらっています。

15年のよしみってやつでしょうか…

印刷業界は急速にデジタル化が進んでいます。

10年前には考えもしなかったことが、日進月歩の勢いでおしよせているのです。

職人技をベースにしてきた印刷会社にとって、これはありがたいことではあります。

職人技に頼らずとも誰でも印刷オペレートができるようになるわけですから。

反面、危機感も高まっています。

これまでの常識がデジタル化の波でくつがえされるからです。

新たな知識や技術の習得も必要になります。

新たな設備の導入も迫られることにもなります。

研修会のテーマは

デジタル化に対応するための基礎知識でした。

印刷はいくつかの工程に分けられます。

製版工程(プリ・プレス)

得意先から入れられたさまざまなデータを印刷用に作り変える工程です。

データには写真やイラストなどのデザインや、

デジカメのデータなどさまざまなものが入ってきます(入稿)。

印刷工程(プレス)

刷版(さっぱん)というアルミ版にインキをのせて紙などに印刷する工程です。

オフセットという形式の印刷方法で

油(インキ)と水の反発作用を利用して印刷します。

製本・加工工程(ポスト・プレス)

刷本(印刷されたもの) を加工して、

ポスターや本などの最終製品に仕上げる工程です。

印刷産業の長い歴史の中で、

これらの工程はそれぞれ独自の歩みを進めてきました。

それぞれに職人技をみがき、

それに頼り、

その技術を次代に伝えながらここまで来たのです。

最初にデジタル化の波がやってきたのはプリ・プレス(製版)でした。

職人の勘と経験とセンスに頼ってきた製版工程は

10年たらずのうちにほとんどすべてがデジタル化されました。

印刷業界の動向は製版のデジタル化に歩調を合わせています。

印刷、製本・加工すべてをデジタル化しようという流れです。

独自の歩みの中で直接の関連を持ちにくかった各工程を、

デジタル化で統一管理ができるようにしたい。

これが現段階の印刷業界のテーマです。

問題は印刷工程がデジタル化には なじまないというところにあります。

印刷は紙の上にインキをのせる作業です。

オフセット印刷に使われる材料は水と油(インキ)と紙です。

紙はその時々の温度、湿度でたえず微妙な変化をします。

水やインキも同様です。

つまり、材料はすべて生もの(なまもの・いきもの)なのです。

たえず表情を変える生ものをデジタル管理することは至難のワザ。

たしかに印刷機はコンピュータ制御できるようになってきてはいます。

昔は機械的操作をオペレータ=人間が行ってきました。

今は人間が動かしていた部分を
コンピュータが変わりにやってくれるようになりました。

その意味ではデジタル化されてきたとはいえます。

けれど水、インキ、紙といった生もの(アナログ素材)の状態までは
制御することはできません。

せいぜい鮮度=精度を安定させるための
条件を整のえるくらいまでが関の山。

デジタル製版データを100%再現するためには

この生ものの鮮度維持がキーポイント。

つまりデジタルで出力されたデータをアナログ素材で再現させなければ、

全工程の統一的な管理はできないのです。(デジタル・ワークフローが実現しない)

生ものの鮮度を保つためには印刷機の健康状態を維持することが必要。

機械の健康管理のために何をどうすれば良いのか

これが印刷会社の大きな課題になっているわけです。

印刷機メーカーは次々と先進的な印刷機を発売します。

最新の機械を導入すれば確かにアナログ素材の鮮度管理はより安定するでしょう。

でも残念ながら印刷機はべらぼうに高い!!

1台何億もする機械を早々には買えないのです。

何しろ印刷単価は平成の時代になってなお何十銭という単位なんですよ。

利益に対して投資の額があまりにも大きすぎる産業なのです。

そこで…

  • 既存の機械の健康状態をどのように把握するのか (印刷機の健康診断)
  • 悪さが発見されたとき、どのような治療をするのか (印刷機の治療)
  • 治癒した状態をどのように維持するのか (印刷機の健康管理)

ということが大切になってくるのです。

研修会ではこの辺のことを重点的にレクチャーされました。

各協力会社の皆さんは死活問題がかかっているだけに、

真剣な面持ちで講義を受けていました。

僕が現在やってる仕事は製版と印刷の橋渡しです。

印刷で再現可能な製版データを作らせる仕事です。

言葉を変えるとデジタルとアナログの調和をはかる仕事です。

生ものを扱う以上、印刷が完全にデジタル化することはないと思います。

だとするならば、次のことが大切になります

  1. いかにアナログでの再現精度を上げるか
  2. アナログで再現可能なデータをいかに作るか

1.の方は印刷の現場がやらなければならない仕事

2.は僕の守備範囲になります。

協力会社の皆さんの真剣な表情を見て

あらためて気をひきしめた研修会となりました。

【最後に】

研修後、恒例の飲み会となりました。

技術者同士の本音の話が展開され、楽しかった!

僕はこの飲み会が好きです。

発注者と業者の利害関係を超えて、

純粋な技術論に花が咲くので

楽しくてしょうがないのです。

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