優しい時間 最終話
森の時計は
ゆっくりと時間を刻む
不器用なまでの父と息子。
この二人が素直に自分の気持ちのままに向き合うのに、長い時間が必要だったんですね。
壊れかけた人との関係を修復するのに、あまりにも急ぎすぎて…。結局はこじらせてしまうか、表面的な和解に終わってしまう。そんなことがあまりにも多すぎますよね。
この親子が向き合うのに費やした時間は本当に長かったですね。会わない時間があって、その会わない時間にそれぞれがいろんなことを体験して。時に人の善意のおせっかいがあったりして…。
拓郎:ここに一人でいるんですか?
湧吉:ああ…
拓郎:寂しくないんですか?
湧吉:最初のうちはちょっと寂しかったよ。
年中 負け犬の気分だった。
それがな、
ここにいていろんな人と話していると
どういうか…
ひどく優しい気持ちになれるんだ。
人にうまく取り入ろうとか、見捨てようとか、
ここにいると何にもない
ここにいると…
純粋に生きていられるんだ。
湧吉にとってはゆっくりとした、優しい時間がかたくなだった心を溶かしていったんでしょうね。
拓郎には男になろうとして焼き物に打ち込んだ時間が…。
梓 :すばらしかった。
あの抹茶茶碗。
合えなかった時間が、
あの中に詰まって、
光ってた。
そしてめぐみ(大竹しのぶ)のこのセリフ。ジーンときましたよ。
覚えてる? あなた言ってたわよね。
若いカップルは互いをいつも見つめ合ってるけど、
熟成したカップルは…見つめあうより
おんなじものをみるようになるって。
おんなじものを見て、おんなじもの聞いて
おんなじものを感じて、おんなじものに感動して…
そういう年取ったカップルは素敵だって…
あなたが見てるもの、
わたしも見てるわ
あなたが感じること、
私も感じてるわ
ここのカウンターで…
いつでもあたし、一緒に…
拓郎を送り出し、『森の時計』に一人残る湧吉。
カウンターに並べてあったはずの二つのコーヒーカップ。
ひとつだけがめぐみの席に。
中をのぞきこむ。
コーヒーは飲み干されていたようで…。
めぐみが拓郎と湧吉のやり取りをこのカウンターで一緒に見ていたことを悟り、微妙に笑う湧吉。
おんなじものを見、おんなじものを感じ…
それはこの熟年のカップルにとっては拓郎なんですね。
どう言ったらいいんでしょうね。
ドラマチックでも、強いインパクトを残したわけではないんだけど、
見終わった後のこの心地よい感じは…
起承転結のはっきりしたドラマが多い中で、このドラマはそういうはっきりとした結論を感じないんです。
もちろん父と子が心を開きあうという結びで、めでたしめでたしなんだけど…
それとも違ったものを感じるんです。
この心地よい感じ…
そうか、それが優しい時間なのか…
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