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2005.02.06

『街角ライブ』 2月5日 即興演奏をリクエストされて・・・

この冬一番の寒さだった今回の『街角ライブ』。
寒さのせいか、人通りもまばら。路上ミュージシャンもまばらでした。

「かくれた名曲、忘れ去るには忍びない歌」の演奏を始めました。今年のテーマです。
今演奏してみたいいろんな歌が頭の中で渦巻いています。洋楽から歌謡曲まで含めて。

で、とりあえず今回は沢田研二モノを数曲演奏しました。
なぜジュリーか?
深い意味はないのですが、たまたまジュリーのアルバムがカーステレオにセットされていただけのことなんですが・・・。ジュリーがソロデビューしてから約10年間のベストアルバム。これがまたいい歌がけっこう入ってるんだな。

  ①LOVE(抱きしめたい)
  ②ヤマトより愛をこめて
  ③白い部屋
  ④あなたへの愛
  ⑤君を乗せて
  ⑥胸いっぱいの悲しみ
  ⑦時の過ぎゆくままに

以前は歌う気にもなれなかったジュリーですが(何しろカッコよすぎて…)、時を経てチャレンジしてみるとそれぞれの歌にストーリー性があり歌いごたえがありました。多分組み合わせて歌うことで意味が出てくるんだろうなと思いながらの演奏でした。

いとこのenta古池の曲で『僕の星まで』。今日が2回目の演奏でした。だんだん情が入ってきて、いい仕上がりになっています。(そのうち紹介いたします)


さて、今回は深く考えさせられる出会いがありました。

突然外人に声をかけられたのです。外人からのリクエストはたまにあることなのですが、なにやらただ事ではない顔をしている。いきなり離婚についての歌を歌ってくれという。それも子供がいる夫婦の離婚についての歌だというのです。離婚人口はかなりの数に上っているにもかかわらず、これをテーマにした歌というのはほとんどないですよね。歌にはしにくいテーマだからね。僕の知っている限りではアルフィーの『メモアール』という曲くらいです。
「そういう歌はレパートリーにない」と言ったら「即興で作ってくれ」と有無を言わせない感じでせまってきました。
何かただ事ではない感じだったので、やりましたよ。頭に情景を思い浮かべて浮かんでくる言葉にメロディーを乗せてアドリブの離婚の歌を。

納得したのかどうかわからないけれど、今度は見も知らない子供を殺す歌を即興で歌えという。
さすがに「何だこいつは、あぶねぇんじゃねえか?」と頭をよぎりましたよ。そこで「なぜそんな歌をリクエストするんだ?」とたずねてみました。
「なぜ日本人は見知らぬ子供を殺す。そこにいただけでナイフで突き刺す?」
言葉がなかなか通じず最初ピンと来なかったのですが、一昨日の子供をナイフで突き刺した殺人事件のことを言っているようでした。

「君は僕にその答えを聞いているのかい?日本人はみんな同じだとでも思っているのかい?」

「私の国、コロンビアでも子供を殺す。殺した8ヶ月の子供のおなかを裂いてコカインを詰めて輸出する。悪いことだけど理由がある。貧乏だから…。でも日本人の殺人、理由が何もない。なぜ?わからない…」

彼の目は憎しみと悲しみをたたえているようでした。

そこまで身振り手振りで話をして僕も腹をくくりました。絶対に歌えない歌です。子供を殺すなどというテーマは。
しばし目を閉じて瞑想しました。浮かび上がってくるイメージを定着させ、イメージの断片をつなぎ合わせおもむろに歌い始めました。

自分が親であること。生まれたばかりの子供を見てできることならこの子の最後まで自分が見守りたいと思ったこと。でも突然見知らぬ誰かに子供の命を断ち切られたこと。見知らぬ誰かはイメージできなかったけど残された自分の心のこと。そして神様のこと。

とてもひとつの歌として完結できるテーマではないけれど、コロンビア人の彼にはごまかしは効かないと思い必死で歌いました。歌のなかばで気がつくと彼の目には大粒の涙が・・・。
友人に付き添われて去っていく彼にも3歳の娘がいるとか。そばの柱をひとつたたいていたその振動が妙に心に残りしばらく歌えなくなり、ライブは一時中断。

中断しながら考えていたことは彼の言い残した言葉。
「あなたはもっとメディア、ニュースを、今起きていることを歌にして歌うべきだ。あなたにはそれだけの力がある」

フォークソングを始めた若いころ、そんな試みをしていました。とても音楽といえたシロモノではありませんが、今起きていることを歌にするという試みでした。浅間山荘事件のことや、70年安保のこと。学校で起きた事件などをアドリブで歌っていました。アドリブだから「演奏」した瞬間に消えてなくなるものでしたがとにもかくにもそれは自分の意思表示でした。
蒲生の喫茶店「いずみ」ではマスターと二人で即興演奏のやり取りをしながらえんえんと歌い続けるなどもしていました。

即興演奏は今でもたまにやることがありますが、それはお客さんを前にしてその反応を見ながらのこと。ライブの場の空気を作るためのもの。もっと積極的に視野を広げ、意識的に即興演奏をするという視点はすっかり忘れ去っていました。

あまりに多くの事件が毎日のように起きる昨今、感覚が麻痺しつつあったのかもしれない。その結果何かを感じたとしてもすぐに薄れていってしまう毎日だったのかもしれない。
そんな反省をちょっぴりさせられた出来事でした。

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