小泉さんはスリ替えの天才?
牧太郎のここだけの話:スリ替え語講座?
「小泉純一郎です。11日の参議院選挙では、自民党は議席を2減らしましたが、与党全体では60議席を獲得し、参議院においても全(すべ)ての委員会で与党が過半数の議席を維持することができました」
見事な書き出しですね。今日は、この「2004年7月15日発行、小泉内閣メールマガジン第148号」を教材にします。
まず「2減」という言葉、いかにも「最小の減」という印象じゃあありませんか。もし「選挙区では民主2193万対自民1969万。その差は230万票」なんて書いたら、大敗したと見破られます。まして「比例区の差は440万票」なんて書いたら……責任を取らされる。そこでサラッと「2減」と書きます。後は「全ての」「過半数」「維持」というプラスイメージの言葉を配置します。最後の「できました」。「皆様のおかげ」と頭を下げる姿勢です。
次が肝心です。「年金、イラクなどに対する強い批判の中で、与野党がほぼ同数という結果になったことは、野党の声にも耳を傾けて(A)『構造改革をしっかり進めよ』という国民の声と受けとめ、改革を促進していきたいと思います」
これ、ヘンじゃありません? そうです。(A)の部分に入る言葉が消えている。(A)は「年金、イラク問題を再度、議論します」でしょう。これを平気で削りました。そして、一気に、誰もケチの付けられない「構造改革」という言葉を持ってくる。「抵抗勢力」を多用した、あの手法です。
「来週、韓国の済州島を訪問し、ノ・ムヒョン大統領と打ち解けた雰囲気の中で話し合います」
この一文、最高です。明るいイメージです。もう選挙なんて過去のコトと思わせます。ここだけの話ですが、小泉さんは首脳外交がうまいとは思いませんが……。「(両国首脳は)打ち解けた雰囲気で(話し合った)」が正しい慣用句ですが、主語を削り、過去形の動詞「話し合った」を無理やり「話し合います」の未来形に変えた。「打ち解けた」という言葉に拘(こだわ)り「成功が約束されている未来」を演出する。お見事!
小泉さんは天才です……では今日の「スリ替え語講座」を終わります。
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牧太郎のホームページ
http://www.maki-taro.net/
毎日新聞 2004年7月20日 東京夕刊
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